NTTデータは11月8日、同社がこれまで取り組んできたオープンイノベーションに向けた活動内容と、そこで得たノウハウなどを説明した。

同社のオープンイノベーションの取り組みは、2014年4月に「オープンイノベーション事業創発室」を設立後、本格化した。

NTTデータ オープンイノベーション事業創発室室長の残間光太朗氏は、同社がオープンイノベーションに取り組む理由を、「従来は、アイデアがあってもビジネス化するには、お金と時間がかかっていた、現在はスマホさえあれば、簡単にビジネスを立ち上げることができる。企業は、こういった新たなビジネスに対して、コアビジネスだけで対応していくことは難しい。エッジの効いたアイデアを持っている人を、いかに早く取り込むかが、競争戦略上重要になっている」と説明した。

  • NTTデータ オープンイノベーション事業創発室室長 残間光太朗氏

オープンイノベーション事業創発室(OI事業創発室)設立以前は、社内からアイデアを募集し、コンテストを開催していたが、既存のビジネスの延長上のビジネスが多く、採用されたビジネスに対して、3カ月間500万円ほど投資しても、結局、市場調査だけで終わってしまうケースが多かったという。

そこで、アクセラアレータ型新規ビジネス組織として、OI事業創発室設立した。同室の役割は、新規案件の種を提供し、その種が育つように主体で取り組む事業部をアクセラレートすることだ。

具体的な活動としては、新技術や新しいビジネスモデルをテーマに先行するベンチャーや有識者とディスカッションを行うマンスリーフォーラム、大使館や国際機関との定例会のほか、世界各国で年2回開催するオープンイノベーションコンテストがある。

マンスリーフォーラムは、毎回5社程度のベンチャーに半歩先のテーマにプレゼンを行ってもらい、すぐにビジネスを創発することを目的に開催。

オープンイノベーションコンテストは、NTTデータ側があらかじめ設定したテーマに基づいてビジネスアイデアを募集し、優勝者は同社と3カ月ビジネス化の検討を行うというもの。テーマは、「ヘルスケア・ライフサイエンス」「金融・保険・決済」「オートモーティブ・IoT」「RPA・バックオフィス」「店舗デジタルマーケティング」「情報流通」「Disruptiveな社会変革」と7つの分類があり、その中でさらにテーマを絞っていく。例としては、Fintech、IoT、AI、ビッグデータなどがある。

7つの分類のうち、前半の6つはNTTデータの既存ビジネスを強化するためのもので、「Disruptiveな社会変革」は、同社がこれまで取り組んでこなかったまったく新しい領域のビジネスを求めるもの。

  • オープンイノベーションコンテストテーマ

このコンテストは世界20カ国で開催、延べ5000名以上が参加し、同社のコアビジネス強化系が48件、新規ビジネスが12件の「種」が集まったという。

同社では、これらの種を主体となる事業部に割り当て、その事業部が「サブWG」つくり、3カ月間(500万ほどの予算)ビジネス化の検討を行う。それを発表してもらい、次のPOC工程(予算1000万円程度)に進むかを検討する。POCは3~6カ月行い、実際に事業化するかを判断する。ゴールとして、100億円規模のビジネス創発を掲げている。

  • ビジネスを創発する仕組み

現在、20弱がビジネス化されているようだが、まだまだ事業規模は小さいという。

残間氏は、「ビジネスには立ち上げ期と成長期があるが、まだまだ立ち上げ期の段階。われわれは10年後を見据えて新規ビジネスを行っている」と語った。

同氏は、同社がベンチャーに提供できる価値として、世界約50カ国、210拠点の顧客ネットワークをマーケティングチャネルとして活用できる点、数多く提供しているICT社会インフラを活用できる点、協業モデルが固まった後、適切な金額を投資できる点の3つを挙げた。

  • NTTデータがビジネスを創発する仕組み

そして、オープンイノベーション事業化成功の鍵として「個人と個人の圧倒的に信頼関係」を挙げた。