キーサイト・テクノロジーは9月20日、同社が2018年7月に発表した最大帯域幅110GHzに対応するリアルタイムオシロスコープ「Infiniium UXRシリーズ」に新たに13~70GHz帯域モデルを追加したほか、次世代の1Tコヒーレント光通信の研究などに最適な光変調アナライザ(OMA)「N4391B」ならびに120GSa/s対応の任意波形発生器(AWG)「M8194A」を追加ソリューションとして提供することを発表した。

Infiniium UXRシリーズは、従来、80G/100G/110GHzの帯域で2chもしくは4ch品の計6製品が2019年2月より提供される予定であったが、同社の想定以上に同シリーズの引き合いが強いこと、ならびに近年、デジタルインタフェースなどの通信回路の高速化が急速に進んでおり、数年後にはさまざまな民生品レベルでも数十Gbpsを超す伝送速度が活用される可能性などが考えられ、将来的に、そうしたより高速な通信の計測に柔軟にアップデートしたいというニーズを受けて新たに、13GHz~70GHz帯域に対応した製品をシリーズラインアップとして追加することを決定したという。

  • Infiniium UXRシリーズの概要

    ラインアップが拡充されたInfiniium UXRシリーズの概要

このため、13GHz帯域品から、ハードウェアを構成する基本的なアーキテクチャは110GHz品までほぼ同じで、オプションとして提供されるアップグレードパスを購入することで、より高速な帯域に対応することを可能としている。ただし、13GHz~33GHz帯域品と40GHz~110GHz帯域品とでは搭載しているA/Dコンバータが若干異なるなど、製品によっては微妙に仕様が異なるため、アップグレードの一部については、ハードウェア交換での対応になる場合もあるという。

  • Infiniium UXRシリーズ製品一覧

    Infiniium UXRシリーズ製品一覧

13GHz~110GHz帯域まで、幅広いラインアップが揃ったことから、同社としては、13~30GHz品については、USB 3.0やPCI Express(PCIe)Gen4、HDMI 2.1などの現行のインタフェースなどの計測を行いつつ、将来のPCIe Gen5などへの対応も柔軟に図っていきたいという思惑を持つ機器ベンダなどを、30GHz~70GHz品については、100Gイーサネットや400Gといった通信関連やPCIe Gen5の開発といったネットワークを中心としたベンダや研究開発部門、そして80GHz~110GHz品については、1Tbpsといった次世代通信技術の研究開発といった部門向けといったユーザー層を想定しており、13GHz帯域など、現行のInfiniiumの別シリーズ品についても、並行して販売を継続していくとする。

  • Infiniium UXRシリーズの帯域別の適用想定アプリケーション

    Infiniium UXRシリーズの帯域別の適用想定アプリケーション

1Tbpsコヒーレント光通信研究を加速させるオプション

このほか、追加ソリューションとして提供されるN4391Bは、110GHzの帯域に対応した光変調アナライザで、110GHz帯域のUXRと組み合わせて使うことが想定されている。これまで、そうした次世代光通信の研究では、研究者がフロントエンドを自作していたが、実際にそのフロントエンドがどの程度の性能を発揮しているのか、といった部分を調べる必要があり、光信号そのものの評価なのか、自作のO/E(光/電気)コンバータの評価をしているのかが、分かりにくいという問題を抱えていた。同製品をそうした自作のものと置き換えることで、性能が担保され、かつ校正済みで利用することができるため、特に1Tbpsコヒーレント光通信研究などの次世代の通信技術の開発を加速させることができるようになると同社では説明している。

  • 光変調アナライザ「N4391B」の概要

    光変調アナライザ「N4391B」の概要

また、AWGも最大120GSps、40GHz帯域に対応しているため、64GBaud/64QAM、100GBaud PAM4といった従来のAWGでは実現が難しかった信号の生成も可能となり、次世代の通信技術開発を加速させることができるようになるとする。

  • AWG「M8194A」の概要

    AWG「M8194A」の概要

統合ソリューションとして次世代通信研究を支援

加えて、こうした光変調アナライザ、AWG、そしてUXRシリーズを組み合わせることで、1Tコヒーレント光通信の信号生成から信号解析までを統合ソリューションとしてカスタマは活用することができるようになり、測定系全体での校正も可能となるため、複雑さが増すそうした高速通信技術開発にかかるさまざまな手間を軽減でき、研究の核となる部分に集中しやすくなると同社では説明しており、そうした次世代通信の研究を行なっている企業や研究機関などに積極的にアピールしていきたい模様だ。

  • 統合ソリューションのイメージ
  • 統合ソリューションのイメージ
  • 統合ソリューションとしての活用イメージ,

なお、いずれの製品もすでに受注は開始しているほか、13GHz~33GHz帯域のUXRシリーズの出荷はすでに開始されている(40GHz帯域以上のUXRシリーズの出荷は2019年2月から開始される予定)。また、AWGは2018年12月から、OMAは2019年3月からそれぞれ出荷を開始する予定で、価格はUXRシリーズが約2500万円程度から、OMAはUXRシリーズの110GHz品とセットで約2億3000万円程度、AWGは約3300万円程度から、となっている。