理化学研究所(理研)は1月30日、エピジェネティクス制御に必須な役割を果たすヒストン修飾を細胞種特異的に解析する手法を開発したと発表した。

  • 細胞種特異的なChIP-Seq(tChIP-Seq)の概要(出所:理研 Webサイト)

同成果は、理研岩崎RNAシステム生化学研究室の岩崎信太郎 主任研究員、水戸麻理 テクニカルスタッフらの共同研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。

ヒトの体の組織は、多種多様な細胞からできている。それぞれの細胞でどのような遺伝子が発現しているかを知ることは、疾患などのメカニズムを正しく理解するためにも重要だ。

細胞の多様性を支えるのは、ヒストンタンパク質の修飾などを介したエピジェネティクス制御だ。現在の生物学では、細胞種ごとに起こっているエピジェネティクス制御を解明することが強く求められている。しかし、そのような解析は技術的な問題によりこれまで困難だった。

今回、研究グループは、この問題を解決する手法「tChIP-Seq」を開発した。同手法は、まず、クロマチンのコアとなるヒストンタンパク質H2Bに、アミノ酸のタグ配列を付与したものを、細胞種特異的なプロモーターで発現誘導し、標的の細胞に存在するクロマチンをラベルする。

このラベルによって、サンプルが複数の細胞種の混合物であっても、ラベルされた標的の細胞由来のクロマチンのみを回収することができる。その後、標的のヒストン修飾を持つクロマチンをさらに抗体によって回収し、得られたDNA配列を次世代シークエンサーによって解読するChIP-Seq解析によって、網羅的にヒストン修飾が生じているDNA領域を解析することができる。

実際にこの手法を使って、マウスの脳組織の神経細胞でのみH3K4me3(ヒストンH3K4メチル化)修飾が生じているDNA領域を解析することによって、神経細胞でのみ特異的に転写されているRNAを多数発見したとしている。

今回の成果を受けて研究グループは、同手法は、マウスのみならず別の生物、多様な組織、細胞種にも応用することができるほか、生命科学のさまざまな研究に利用されると期待できるとしている。