米カリフォルニア州アナハイムで、米テラデータが開催中の「Teradata PARTNERS Conference 2017」において、米テラデータ インターナショナル担当 エグゼクティブバイスプレジデントのピーター・ミケルセン氏と、2017年9月8日付で、日本テラデータの社長に就任した高橋倫二氏がインタビューに応じた。

ミケルセン氏は「日本におけるシェア拡大の余地はまだ大きい」とし、高橋社長は「多くの先進的事例を日本の企業に紹介し、深く入り込みたい」と抱負を述べた。高橋社長が取材に応じるのは社長就任以来、初めてのことになる。なお、インタビューは共同で行われた。

テラデータの日本市場における課題と新体制への期待を教えてほしい。

ミケルセン:テラデータは、日本において、様々な変更を行っている段階にある。位置づけを変えていこうと思っている。そのための新たな計画を着実に実行していくために、新社長として、高橋氏が就任した。

高橋氏は、私が採用した。テラデータは、日本の市場において、もっとシェアを拡大していきたいと考えている。まだまだ市場シェアを拡大できるはずだ。日本には多くの会社があり、さらに、先進国でありながら、多くの社会的課題が存在している。この解決において、テラデータが役に立つことになる。データやアナリティクスといったところに焦点を当て、日本の市場において体制を強化しながら、しっかりとシェアを獲得していくことが先決だと考えている。

米テラデータ インターナショナル担当 エグゼクティブバイスプレジデントのピーター・ミケルセン氏

これまでの高橋社長の経験はどう生かされるのか?

高橋:大手企業に深く入り込むというところは、これまでの会社のなかでも経験をしてきたところだ。これは日本テラデータのなかでも生きると考えている。

日本のどの市場に力を注ぐのか?

ミケルセン:製造分野、とくに自動車分野に積極的に力を入れていくことになる。商機は大きいと考えている。しかも、これらの業界は、あまりアナリティクスに力を入れていない企業が多い。通信業界や流通業界、金融業界では、何年にも渡って、アナリティクスを活用して経験が蓄積されており、アナリティクスを活用しないと生き残れないという認識も高いが、製造業ではそこまで活用しなくてもいいという風潮があった。だが、製造業は、これからアナリティクスに力を入れていく必要がある業界ということもできるだろう。

とくに、IoTの広がりによって、アナリティクスは不可欠になってくる。製造業においては、これから急ピッチでアナリティクスが伸びていくと予測している。調査では、3兆ドルの市場があるとされているものの、そのうちの6割のアーキテクチャーが不適切とも指摘されている。しかも、企業内や工場内のシステムが統合化されず、サイロ化されている場合も多い。そうした課題を解決しながら、効果的なアナリティクスを実現することが重要になる。これまでは海外の自動車メーカーとの取引はあるが、日本の自動車メーカーとの取引は少ない。そこを増やしていきたい。

高橋:欧州では、ボルボのような先進的な導入事例がある。こうした事例を参考にしながら、日本の自動車業界に対しても力を入れていきたい。同時に、コネクテッドカーに向けた提案も行いたい。また、金融業界では日本においても先進的な事例がある。eコマースでもすばらしい事例がある。今回のTeradata PARTNERS Conference 2017でも、じぶん銀行や楽天トラベルなどの事例が紹介されているが、こうした事例をもっと多くの日本の企業に紹介し、より深く、お客様の課題解決に応えていくことに力を注ぎたい。

日本テラデータ 高橋倫二社長

高橋倫二氏の略歴

愛知県出身 56才。1984年3月に名古屋大学農学部卒業後、同年4月、日本IBMに入社。2008年1月に米IBMコーポレーション ディレクター、2009年1月に日本IBM 執行役員 ITS事業部長に就任。2011年1月に執行役員 西日本支社長、2013年7月に執行役員 エンタープライズ営業統括 副統括本部長を経て、2014年11月にレッドハット 常務執行役員 エンタープライズ営業統括本部長に就任。2017年9月に日本テラデータ 代表取締役社長に就任した。

ミケルセン:顧客の多くが求めているのはデータベースではなくて、アナリティクスである。顧客にとっての悩みの種は、アナリティクスを商用環境で利用するには、要件がありすぎて、現場の意見を反映した価値があるものにするのが難しいという点だ。これまで多くの企業は、アイデアを出すことに力を注ぎすぎ、現場で利用したり、実際のビジネスに生かしたりするところをないがしろにしてきた。開発したものを実際の現場で利用することが大切であり、その支援において、テラデータが果たす役割がある。

クラウド環境でのテラデータの利用はどれぐらい進んでいるのか?

ミケルセン:世界中の企業と話をすると、クラウドは戦略的な判断であるというの共通認識であり、大企業においてはその傾向が強い。テラデータの顧客の多くは大企業であり、クラウド化が促進されている。ディザスタリカバリや、開発、検証環境での利用だけに留まらず、すでに、大規模な本番環境を稼働している企業もある。そのなかで、テラデータは、クラウド化の促進を支援する企業として認識されている。

クラウド化によって、フレキシビリティが実現され、データに近いところでアプリケーションを走らせることができるというメリットがある。だが、クラウド化すれば、すべてが簡素化し、コストが下がるという認識が強いが、必ずしもそうではないことは知っておくべきだ。クラウドよりも、オンプレミスの方が安い場合もある。目的を持った用途に限定し、チューニングした高性能システムであれば、オンプレミスの方が有利だ。

また、クラウド化することで新たに発生する問題もある。データをどこに置くのかというバランスや、ネットワークセキュティの確保や、ネットワークの遅延を解決するといった課題もある。規制が厳しい業界では、データ保護の観点や利用の制約によって、オンプレミスを選択するしかないというケースもある。5年後には、ほとんどのものがクラウドに移行しているとは思うが、一朝一夕でクラウド化を実現するのは難しい。ただ、テラデータの強みは、同じ機能が、プライベートクラウドでも、パブリッククラウドでも、オンプレミスでも利用できる点にある。ハイブリッドクラウドによる提案でも、テラデータは強みを発揮できる。

クラウド化の進展によって、これまでテラデータが対象にしてこなかった中小企業も対象になるのか?

ミケルセン:確かに、クラウドの浸透によって、中小企業からの引き合いが生まれるきっかけにはなると考えている。テラデータの価値を提供することもできると考えている。しかし、テラデータが戦略的に中小企業を狙っていくということはない。テラデータのリソースは限られている。この限られたリソースをどう活用していくかが重要であり、そのためには大手企業をターゲットとすることが最適となる。しかも、大企業とは永続的な取引が可能になる。技術面での制約ということではなく、マーケティングの観点やリソースの有効活用ということから、大企業をフォーカスしていくことになる。

IT市場の半分は、アナリティクスやデータ管理に関わる部分であり、ここにテラデータはフォーカスしたビジネスを行うことができる。世界トップ500社だけを狙っていっても大きな市場が存在する。