NTTドコモビジネスは6月11日、監視カメラなどのさまざまなデバイスから映像を収集・蓄積・分析し、多様な現場の変革を加速させる映像AIプラットフォームサービス「docomo business SIGN VPaaS」(以下「新サービス」)の提供を同日より開始することを発表した。
この発表に際し同社はメディア向け説明会を開催。同サービスを担当するNTTドコモビジネス 執行役員 プラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部長の小嶺一雄氏が登壇し、新サービスの強みやデモンストレーションを通じた機能の紹介、将来的なサービス構想について語った。
8割が未活用の映像データを活かす新サービス
生成AIが発展する近年では、その能力をさまざまなアプリケーションに実装した最新技術が次々と登場し、イノベーションが着々と加速している。特に監視カメラでの撮影などで取得された映像データは、人数の認識による混雑データの可視化をはじめ、“無人店”を実現させる監視や店内導線分析を通じたマーケティング面での活用など、あらゆる角度からメリットをもたらしている。
しかしこうした「映像AI」の活用は、まだ十分に広がっていないのが現状だという。NTTドコモビジネスによる試算では、市場全体を見渡すと約600万台もの監視カメラが存在しているというが、その中でネットワークに接続して活用されているものはわずか20%ほどとのこと。大半の監視カメラはネットワーク未接続の状態で使用されており、膨大な映像データが十分に活用されていないという。
こうした未活用の映像を有効なビジネス資産に変えることを目指してNTTドコモビジネスが発表したのが、今般の新サービス。映像AIを“簡単に素早く”現場へと導入し、セキュリティ面でも安心を提供する。そして不透明だった通信コストも最適化させる機能を実装することで、従来懸念されていた映像AI導入の壁を打破するとしている。
同サービスは、現場の各種デバイスをセキュアな環境でネットワークへとつなぐ「docomo business SIGN」および「docomo business RINK」を介して現場データと接続。AIによる分析やハイブリッド保管などの機能を通じて、メリットを提供する。
導入ハードルの低減やセキュリティ性能に強み
これまで小売チェーンや工場などの現場では、設置済みの監視カメラから取得した映像データを、トラブルなどが発生した際に目視で確認し、要因の特定に取り組んでいた。こうした作業は人手で行うには効率が悪いことから、普及が本格した近年ではAIの導入を検討するケースも増えているというが、AIのチューニングや映像保管・検索、カメラのネットワーク接続など多数のプロセスが必要となることから、長いリードタイムへの懸念によって導入を断念するケースがあったという。
しかし新サービスでは、パッケージとしてあらかじめ複合機能を兼ね備えたパッケージが用意されているため、導入開始から実運用までに要する期間が短いのが特徴とのこと。また既存カメラとの接続も容易で、ゲートウェイの設置などによりメーカーを問わずさまざまなカメラを新サービスに活用可能だといい、小嶺氏は「10年前に導入した製品のような古い機種でも対応できる」とする。このようにシステムインテグレーションを必要とせず既存設備が活用できるサービス体系を整えたことで、時間・労力やコストなどのハードルを大きく引き下げられるとした。
一方で、監視カメラのネットワーク接続における懸念として、セキュリティの問題も挙げられている。近年ではサイバー攻撃が多様化し、ネットワークカメラを利用した事例もあるとのこと。その解決に向け新サービスでは、2025年9月に提供開始した「docomo business SIGN」を活用するといい、不正通信の脅威を検知した際には該当するカメラのみ通信を遮断し、セキュアな体制が整ってから通信を復旧するなど、より安全な映像データ伝送を実現するという。
またユーザーの懸念点として見過ごせない「データ通信料」の問題についても、新サービスでは効率化を図っている。従来は全データをクラウド上にアップロードしていたのに対し、新サービスでは動きがある瞬間など必要なデータのみをクラウドに送ることで、ネットワーク利用料を最適化。「通信事業者がいうのも変ですが」としつつ、ユーザーファーストのサービス体系をアピールした。
各現場に合わせた「AIエージェント型UI」も追加実装へ
なおNTTドコモビジネスでは、追加機能としてユースケースごとの「AIエージェント型UI」の開発を進めているとのこと。同機能は、商業施設や小売チェーン店、物流拠点など異なる現場それぞれに最適化されたUIを提供することで、スムーズに高度なAI活用へとつなげていくものだという。
説明会の中では、小売チェーンの現場向けに構築されたAIエージェント型UIのデモンストレーションを実施。複数店舗を統括するマネージャーによる使用が想定されたこのデモでは、各店舗の品出し状況をカメラで監視し、異常を検知したAIによるアラートを基にして最適な改善指示を行うとともに、その改善によってどれだけの金額的効果が生じるかを可視化するなど、横断的な映像解析を実現する機能が披露された。
また現場作業への影響だけでなく、レポーティングについても自動化できるとのこと。ビジネスの効率化に寄与するこの機能については、「9月ごろには提供を開始していきたい」と話した。
将来的には“フィジカルAIの外部脳”へ
今般正式な提供開始が発表された新サービスだが、NTTドコモビジネス社内においては、“カスタマーゼロ”の取り組みとしてすでにシステムが稼働しているとのこと。同社オフィスに設置された440台以上の監視カメラを一元管理することで、煩雑だった管理業務が効率化される効果を確認しているという。
すでに引き合いもあるという同サービスの今後について小嶺氏は、「クローズドな形で進める気はなく、多くの企業とパートナリングしながらサービスを展開していきたい」とし、現時点でのパートナーとして、AIカメラメーカーのVerkadaやエッジAIおよびゲートウェイを提供するEDGEMATRIXとamnimoなどを紹介した。
さらに先の将来的な展望については、新サービスを“フィジカルAIの外部脳”とすることを目指すという小嶺氏。街中で当たり前のようにロボットなどが稼働し、フィジカルAIが至る所で活用される未来において、ロボットの情報処理サポートや機能アップデートをスムーズにする役割を新サービスが担い、「AI-Centric ICTプラットフォーム」を支えていきたいとしている。







