Microsoftは2017年7月9日(以下すべて現地時間)、Microsoft Inspireを開催した。これまでWorldwide partner conferenceと呼ばれていたパートナー向けイベントだが、今回は10日に開催した基調講演の様子をお送りする。なお、本イベントの参加者数は1万7,000人(事前登録数)。日本からは約150社約450人(同)が参加した。

最初に登壇したMicrosoftのRon Huddleston氏は、「私は約1年前からMicrosoftに参加した新参者だが、パートナービジネスは20年以上続けてきた。Microsoftは販売部門も営業部門もパートナーとの成功を常に考える会社である。(この流れを加速させるため)『パートナーファースト』を推進する組織改編を行う」と発表。「Build-with」「Go-to-market」「Sell-with」を3本柱にパートナー専門部署を作成し、Microsoft Azure Co-Sell Programなど新たな取り組みを行うことを明らかにした。

Microsoft CVP, One Commercial PartnerのRon Huddleston氏

「Azure co-sell program」の概要。Azure上でソリューションを構築するパートナーが共同販売する場合、年間契約額の10%を販売奨励金として支払う

次に登壇したMicrosoftのSatya Nadella氏は、自社のミッションや社会のあらゆるところで始まるデジタルトランスフォーメーションが好機を生み出すと、エコシステムの重要性を強調。今後は「モダンワークスペース」「ビジネスアプリケーション」「アプリケーション&インフラストラクション」「AI(人工知能)」と4つのソリューション領域を提供し、デジタルトランスフォーメーションを加速させると述べている。

Microsoft CEOのSatya Nadella氏

Microsoftのパートナー向け提供領域。この4ソリューションで企業の生産性やデジタルトランスフォーメーションを加速させるという

これを踏まえてMicrosoftは、「Microsof 365 Enterprise」「Microsoft 365 Business」の提供を発表。具体的には「Office 365」「Windows 10」「EMS(Enterprise Mobility+Security)」を購入しやすいライセンス形態で再パッケージングしたものだ。同EnterpriseはOffice 365 EnterpriseとWindows 10 Enterprise、EMSを含み、Microsoft 365 E3/E5と2つのプランを用意する大手企業向け。同BusinessはOffice 365 Business PremiumとWindows 10用デバイス&Officeアプリケーション向けセキュリティ管理機能、Windows 10へのアップグレード権、そして集中型ITコンソールを用意する中堅中小企業向け。8月2日からプレビュー版を公開する。Microsoftは「どんな企業規模でも同様の技術を用いて活動できる」(Nadella氏)と説明していた。

今回新たに発表した「Microsoft 365」

デモンストレーションは発表済みの技術として、Outlookに組み込まれたサマリーカードでフライトの時間が見つけやすくなり、Windows 10 Fall Creators Updateでの実装が見送られる予定のTimeline機能などを紹介。さらにWordのスペル&文法チェッカー機能の強化や、ワンクリックで機械学習を用いた予測を行うExcelのAI機能、PowerPointデザイナーの強化などを披露した。

さらにMicrosoftは「Microsoft Relationship Sales」を新たに発表。同社Alysa Taylor氏の説明によれば、「Dynamics 365 for Sales」「LinkedIn Sales Navigator」をセットにしたものだ。2016年6月にMicrosoftはLinkedInの買収を発表し、同年12月には自社製品との連携することを明らかにしていたが、その結果の1つが世に現れたこととなる。ダッシュボードでは売り上げ不足をひと目で確認し、Microsoft Graph API経由で販売機会を持つ顧客や関連情報を抽出。これらはAzure Machine Learningがベースになっている。

Microsoft GM, Business Applications and Industry, Cloud+EnterpriseのAlysa Taylor氏

Nadella氏は「Dynamics 365とMicrosoft 365、LinkedInの組み合わせは高い網羅性で(必要な情報を)提供できる」と語る

Microsoft Relationship Salesのダッシュボード

販売機会を持つ顧客情報などを容易に確認できる

MicrosoftのJulia White氏は「アプリケーション&インフラストラクション」「AI」領域に対して、Bot FrameworkやAzure Bot Serviceのデモンストレーションを披露。なお、今回のイベントでアプリケーション基盤となるMicrosoft Azure Stackの注文受付を開始したことも明らかにした。チャットボットでは自動車保険を例に、契約する商品をクリック選択。Translate API経由で言語の自動認識や音声認識による本人確認が可能だという。

Microsoft CVP, Azure+Security MarketingのJulia White氏

チャットボットが実用レベルに達しつつあるとデモンストレーションを行った

Azureポータル側では状況などがひと目で確認できる

LogicApp Designerを使ったチャットボットの流れ

この他にも多くの導入事例が紹介されたが、基調講演以外での発表もいくつか紹介したい。まず、2017年9月からCSP(Cloud Solution Provider)プログラムでWindows 10サブスクリプションに仮想化の使用権を付与し、Microsoft Azureなどでホスティングが可能になる。さらにCSPサブスクリプションでライセンスされた仮想マシンをホストするホストティングパートナーの新しい認定プログラムを発表した。

もう1つはMixed Reality Partner Programの拡充だ。これまで販売代理店パートナーは米国/カナダ/英国/フランス/ドイツに留まっていたが、新たにオーストラリア、アイルランド、ニュージーランド、中国、そして日本が加わると発表。プログラムの詳細は12日に発表される。

阿久津良和(Cactus)