仮想化基盤を取り巻く環境が、大きな転換点を迎えている。ライセンス体系の変更やコスト上昇を背景に、既存環境の見直しを迫られる企業が増えている一方で、移行には運用の変化やスキル習得の不安も伴う。どこから検討を始め、どのように移行を進めるべきなのだろうか。
こうしたなかで注目されているのが、日本ヒューレット・パッカード(以下、HPE)が2025年に国内提供を開始した「HPE Morpheus VM Essentials Software(以下、VM Essentials )」だ。KVMベースのハイパーバイザーに統合管理機能を組み合わせ、コストと運用性のバランスを打ち出している。
本記事では、HPEでプリセールスを担当する三上和真氏・西村栄一氏と、VM Essentialsの検証・導入支援に早期から取り組んできたアルファテック・ソリューションズ(以下、ATS)の横尾純平氏・大坂祐輔氏に、仮想化基盤の課題、VM Essentialsの特徴、そして移行を現実的に進めるための知見を聞いた。
アルファテック・ソリューションズ株式会社
エンタープライズ事業部 技術部 第4技術グループ 横尾純平氏
エンタープライズ事業部 技術部 第1技術グループ 第1チーム 大坂祐輔氏
日本ヒューレットパッカード合同会社
デジタルセールスコンピュート事業統括本部 パートナー技術部 三上和真氏
データソリューション事業統括本部 シニアテクノロジーアーキテクト データソリューション技術部 西村栄一氏
ライセンス変更で「選択肢が減った」 仮想化基盤の変化と現場のリアルな悩み
――近年、仮想化基盤を取り巻く環境はどのように変化していますか。
HPE 三上氏:これまでは、特定の仮想化ソフトウェアが圧倒的な支持を得ていました。お客さまのニーズに応じた多様なライセンスが用意されており、多くの企業にとって最適な選択肢だったからです。しかし近年は、買収に伴う契約変更や価格上昇により、「同じ構成を維持できない」という懸案事項が顕在化しています。結果として、実質的な選択肢は減少しています。
ATS 横尾氏:以前はメーカーから無償ライセンスが提供されており、エンジニアが個人的に検証してナレッジを貯めることができました。しかし、現在はその無償版も入手困難になり、知見を蓄積する場も失われつつあります。今後はKVMをベースにしたハイパーバイザーなどへの移行が検討されていますが、どれが主流になるのか、多くの企業が様子見をしている状態です。
――既存の基盤を使い続けるか、新たな基盤へ移行するか。企業はどのような不安を抱えているのでしょうか。
ATS 横尾氏:お客さまの判断は二極化しています。コストが掛かっても安定稼働・業務継続を最優先して既存基盤を維持する企業と、予算の都合で早急に新しいハイパーバイザーを選定しなければならない企業です。移行を検討する際の最大の懸念は「これまでの運用ナレッジが通用しなくなること」です。既存の管理画面やAPIの操作に慣れ親しんだ担当者にとって、新しい環境へ移行し、再びスキルを習得し直すことには大きな心理的ハードルがあります。
ATS 大坂氏:新しい基盤をご提案する際、お客さまからは必ず導入実績を聞かれます。市場に出たばかりのソリューションに対しては、管理手法が変わることへの不安をどう払拭するかが、私たちSIerの腕の見せどころだと感じています。
「価格」と「メーカーの安心感」を両立する選択肢
――そうした市場の課題に対する新たな選択肢として登場したのがVM Essentialsですね。どのような背景で誕生したのでしょうか。
HPE 三上氏:仮想化ライセンスの高騰でお客さまが最も困窮していたタイミングに、迅速に市場へ投入した製品です。これまで多くの企業が利用していた標準的な機能と価格帯にマッチするよう設計されています。
開発スピードの裏側には、HPEが買収したマルチクラウド統合管理ソリューション「Morpheus Data」の存在があります。同製品の優れた統合管理機能の一部を組み込むことで、KVMをベースにしつつ、使いやすい管理画面を実現しました。
――他のハイパーバイザーや従来の仮想化基盤と比較した際の強みを教えてください。
HPE 三上氏:最大のメリットは従来のコア課金ではなく「ソケット課金」を採用している点です。本製品は「CPU1枚につき1ライセンス」のため、100コアを超えるような高性能CPUも登場するなか、サーバーを集約するほどライセンスコストを大幅に削減できます。
HPE 西村氏:また、情シス部門にとって重要なのが「サポート窓口の一本化」です。無償OSSはコストを抑えられる一方、トラブル時の責任は自社で負う必要があります。VM Essentialsであれば、ソフトウェアからハードウェア、管理ツールまでHPEがワンストップでサポートします。原因切り分けによるベンダー間のたらい回しがなく、明確な責任体制のもとで安心して運用できます。
HPE 三上氏:「HPE製品=HPEサーバー専用」と見られがちですが、実際には他社製サーバーやストレージにも対応しています。「ベンダーロックインからの解放」を掲げており、お客さまのインフラを特定ベンダーに縛ることはありません。
――上位エディション「HPE Morpheus Enterprise Software」との使い分けについてはいかがでしょうか。
HPE 三上氏:基準となるのは、「管理したい環境の範囲」です。VM Essentialsは機能をシンプルに絞り、本製品のハイパーバイザーと既存の仮想化基盤の2環境を統合管理するためのエディションです。オンプレミス環境の移行や並行運用が主眼であれば十分に対応できます。
一方、Enterpriseエディションは、Morpheusの機能をフルに利用でき、パブリッククラウドを含む多様な環境を一元管理可能です。オンプレミスとクラウドを横断したハイブリッド運用を見据える場合に適しています。
プロの目による徹底検証と、現場での導入アプローチ
――ATSでは、VM Essentialsをどのように検証されてきたのでしょうか。
ATS 横尾氏:リリース直後から実機検証を重ねてきました。「仮想マシンにて古いOSは動作するか」「他の仮想化基盤から安全に移行できるか」など、お客さまの要件に直結する点を重視しています。場合によっては非推奨構成もあえて試し、どこまで実用に耐えるかを見極めています。
ATS 大坂氏:HPEが主催する共同検証プログラムにも参加し、疑問点を解消しながらナレッジを蓄積してきました。こうした取り組みが評価され、「VM Essentials Question Star Award」も受賞しています。検証を通じて、カタログスペックだけでは分からない現場の感覚を把握できた点は大きな収穫でしたね。
――実際に導入を検討されているお客さまの事例や、共通する傾向はありますか?
HPE 三上氏:ある大手製造業のお客さまの事例ですが、いきなり基幹システムを全面移行するのではなく、まずはメインから独立したシステムへの導入を第一歩として選択されました。最初は検証を兼ねて影響の少ない範囲で動かしてみて、上手くいくことが確認できたら「じゃあ次はこのシステムも」と段階的に適用範囲を広げていく。そういったスモールスタートのケースが増えています。
ATS 横尾氏:同案件では、実際にATSが移行手順の確立からサポートしました。標準ツールだけでは対応が難しい部分もあり、オープンソースのコマンドベースのツールを用いて、既存の仮想マシンイメージをKVM用に手動で変換してVM Essentialsに登録するという少し泥臭い移行手順を検証し、移行を実現しました。
HPE 三上氏:こうしたATSの手厚い現場支援により、本番環境でも十分に使用できるという評価が広がり、引き合いも増えています。今後はメインの基幹システムのリプレイスもさらに加速すると見ています。
移行の壁を越え、仮想化基盤の運用を最適化するために
――最後に、今後の仮想化基盤を見直す企業へメッセージをお願いします。
HPE 三上氏:既存環境を別の基盤へリプレイスする際、「現在と同じ構成で」と考えてしまうケースがよく見受けられます。しかし実際には、リソース使用率が30〜60%程度にとどまることも多く、最適化の余地があります。HPEが提供する無償のアセスメントツール「HPE CloudPhysics」で現状を可視化し、無駄のない構成と適切なライセンス設計につなげていただきたいです。
ATS 横尾氏:仮想化基盤は一度導入すると"塩漬け運用"になってしまう企業が少なくありません。ただ、バージョンが古くなりすぎると、アップデート時の負担増だけでなく、セキュリティリスクにも直結します。管理系ツールやバックアップが攻撃対象となるケースも増えており、定期的な更新は不可欠です。
ATSでは、構築後の運用も見据え、継続的なアップデート支援やトラブル時の対応を含めた伴走型サポートを提供しています。窓口代行にとどまらず、構築部門が直接対応し、必要に応じてリモートでの設定変更や対応も行うことで、迅速な問題解決を支援します。 既存環境からの移行についても、事前検証から手順確立まで柔軟に対応しています。環境ごとに最適なアプローチを選定できるノウハウがあるため、「移行が不安だ」という方は、ぜひ我々SIerの技術力を頼っていただきたいですね。
ATS 大坂氏:仮想化基盤にはさまざまな選択肢があります。当社は特定ベンダーに依存せず、お客さまの環境や予算に応じた最適な提案を行っています。仮想化インフラでお困りのことがあれば、何でもご相談ください。
HPE 西村氏:HPEは、VM EssentialsやMorpheus Enterprise、データ移行ソリューション「HPE Zerto Software」、運用管理プラットフォーム「HPE OpsRamp Software」を組み合わせた「CloudOps」という包括的なアプローチでお客さまのIT環境を支援していきます。ハードウェア面でもアプライアンスモデルを拡充しており、さらにアプライアンスモデルの拡充により、ファームウェアから仮想基盤まで一括でアップデートできる仕組みも提供していく方針です。
ハードウェアとソフトウェアが融合した包括的なアプローチで、今後もATSと連携しながら、お客さまのインフラ運用を支援していきます。
[PR]提供:日本ヒューレットパッカード、アルファテック・ソリューションズ




