宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2日、環境省、国立環境研究所(NIES)とともに、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による晴天域の観測データから解析・推定した、月別「全大気」のメタン平均濃度を、国立環境研究所GOSATプロジェクトのWebページにて公開した。

「いぶき」(GOSAT)による全大気 平均メタン濃度(出所:JAXA Webサイト)

メタンは二酸化炭素に次ぐ重要な温室効果ガスであり、その地球温暖化への寄与は同じ量の二酸化炭素の25倍にものぼる。その主な発生源は、農地/家畜、廃棄物、湿地、化石燃料など多岐にわたり、大気中では主にOHラジカルとの反応による消失もある。地表付近のメタン濃度は18世紀頃までは700~750ppbの範囲と安定していたが、その後人間の活動によって急激に増大し、現在では1800ppbを越えている。

世界気象機関(WMO)を含む世界のいくつかの気象機関では、これまでも地上での全球平均濃度を発表してきたが、メタンを含む温室効果ガスは高度によって濃度差があるため、地上観測点だけの濃度データでは地球大気の全体濃度を表さない。

これに対し、JAXAと環境省、国立環境研究所(NIES)が共同開発した温室効果ガス観測専用の衛星「いぶき」は、温室効果ガスの地表面濃度ではなく、地表面から大気上端までの大気中の温室効果ガスの総量を観測することが可能となっている。

JAXAは、2009年5月~2017年2月までの約8年間の「いぶき」観測データを用いて「全大気」の平均メタン濃度を算出したところ、月別濃度は北半球の初夏~夏(5~7月)に極小、北半球の晩秋~冬(11~2月)に極大となる季節変動を経ながら年々上昇し、2017年1月には過去最高となる約1815ppbを記録。また、推定経年平均濃度も2017年2月に同じく過去最高の約1809ppbを記録した。

ただし、衛星で観測できる地域は、太陽高度が高く、かつ雲のない特定の地域に限られるため、算出した「全大気」の濃度は「いぶき」の観測データに基づきモデル的手法を用いて推定した結果だという。

なお、環境省、NIES、JAXAの三者が6月2日より公開した、「いぶき」による晴天域の観測データから解析・推定された月別「全大気」のメタン平均濃度は、国立環境研究所GOSATプロジェクトのWebページで誰でも閲覧できる。このデータは「いぶき」の運用が続く限り、定期的に更新されるということだ。今回のデータ公開の目的についてJAXAは、メタン濃度増加の事実を人々へ広く周知し、温室効果ガス排出の抑制につなげていくためと説明している。