国家プロジェクトとしてガラスパネル上での3次元化を推進

InFOプロセスは公表されていないが、極めて複雑なプロセスのようで、ウェハプロセスを熟知し経験あるTSMCの得意とするところではあるが、ウェハプロセスの経験のないOSAT(Outsource Assembly and Test:受託パッケージングテスト事業者)ではマネできそうにはない。InFOは、シリコンウェハ基板を土台として用い、チップを搭載し、再配線層を形成後、最後にシリコン基板を剥がす。TSMCに対抗するSamsungは、シリコン基板ではなく、液晶製造で使いなれたガラスパネルを用いて低コスト化をはかる、いわゆるパネルレベルパッケージング(PLP)の方向だが、FOWLPの上にDRAMを積層するようなPLP3次元化の開発はまだ誰も成功していない。

「日本の半導体メーカーは、アプリケーションプロセッサを製造していないこともあり、東芝を含めてどこもFOWLPをやろうとはしていない。しかし、日本でも、回路設計の自由度が増す、このわくわく感ある技術を将来の半導体デバイスのために開発しておくべきである」と明島氏は主張した。エッジの人工知能(AI)エンジンやIoTセンサノードなどは、日本でじっくりと腰を落ち着けて開発すべきであるとし、このためにパネルベースのFOWLPで高品質3次元化を目指した国家プロジェクトを起こしたという。具体的には、エッジ向けAIエンジン内部のGPUとDDR3チップ3個をFOWLPを採用して3次元実装するという。

基板サプライヤの猛反撃が始まる

FOWLP採用で、ウェハプロセスが得意なファウンドリがフルターンキービジネスをおこなうようになると、パッケージ基板が不要になるので、基板サプライヤや後工程請負業者にとっては死活問題となる。彼らの中には「FOWLPはAppleのきまぐれにすぎない。必ず従来方式に戻ってくる」と強がりを言う者もいる。基板サプライヤも、ファインピッチを可能にするパッケージ手法をいろいろ開発しており、「いずれ猛反撃が始まるだろう」と明島氏は言う。

最後に、明島氏は「FOWLPはパッケージの画期的な技術の予感がする。従来の延長線上にはない、わくわく感のある技術である。近い将来、6000億円規模の市場になる可能性がある。日本の強みは、装置と材料であり、どのようにしてFOWLP市場に参入するか戦略を練る必要がある。日本に残るのは、装置・材料とデバイス試作だろう。量産は海外ファウンドリに任せるにしても、AIエンジンやIoTセンサノードなどの開発はパッケージを含めて日本国内でじっくりやるようにすべきであろう」と述べ、日本の今後の方向性を示した。