理化学研究所(理研)は8月9日、スーパーコンピュータ「京」と最新鋭気象レーダを生かした「ゲリラ豪雨予測手法」を開発したと発表した。

理化学研究所 計算科学研究機構データ同化研究チーム 三好建正チームリーダー

同成果は、理化学研究所 計算科学研究機構データ同化研究チーム 三好建正チームリーダーらの研究グループによるもので、米国科学誌「Bulletin of the American Meteorological Society(8月号)」に掲載される予定。

スーパーコンピュータを使った天気予報シミュレーションは、通常1kmより粗い解像度で、1時間ごとに新しい観測データを取り込んで更新する。しかし、ゲリラ豪雨の場合、わずか数分の間に積乱雲が急激に発生・発達するため、1時間の更新間隔では予測が困難であり、また、1kmより粗い解像度では、ゲリラ豪雨を引き起こす積乱雲を十分に解像できない。

一方で、最近では「京」を使った解像度100mや10mといった高精細なシミュレーションによりゲリラ豪雨を引き起こす積乱雲を詳細にシミュレーションできるようになった。また、2012年より運用が開始されている情報通信研究機構と大阪大学が開発したフェーズドアレイ気象レーダでは、30秒のあいだに100m分解能で半径60kmの範囲を隙間なく感知することで、ゲリラ豪雨の動きを正確に観測できるようになっている。

今回、同研究グループは、「京」によるシミュレーションと、フェーズドアレイ気象レーダの双方から得られる膨大なデータを組み合わせる「ビッグデータ同化」を行うことで、解像度100mで30秒ごとに新しい観測データを取り込んで更新するという、先行研究より1桁高い解像度およびデータ同化頻度を達成。これにより、2014年9月11日に起こった神戸市付近でのゲリラ豪雨など、実際のゲリラ豪雨の動きを詳細に再現することに成功した。

三好チームリーダーによると、現状では、本来30秒以内に完了しなければならないビッグデータ同化の計算におよそ10分かかっているため、今後は30秒ごとに得られる観測データを30秒以内に処理するためのデータ転送や計算の高速化を図っていくことで、リアルタイムでのゲリラ豪雨予測手法を開発し、実用化を目指していきたい考えだ。

2014年9月11日午前8時25分の神戸市付近における雨雲の分布。左上:フェーズドアレイ気象レーダの実測データ。左下:データ同化をしないシミュレーションの結果。右上:解像度100mの「ビッグデータ同化」によるシミュレーション結果。右下:解像度1kmのデータ同化によるシミュレーション結果。右上の解像度100mの「ビッグデータ同化」によるシミュレーション結果は、左上の観測データをよく再現している。右下の1kmのデータ同化によるシミュレーション結果は、観測データが表す雨雲の内部構造を詳細に表すには不十分。左下は30秒ごとの観測データを同化しない場合を示し、観測データに対応する雨雲が現れない。なお、強い雨ほど赤く示されている(画像提供:理化学研究所)