ISC 2016において、京コンピュータの後継となる次期スーパーコンピュータ(スパコン)と重点課題アプリケーションを開発するフラグシップ2020プロジェクトのプロジェクトリーダーである理化学研究所 計算科学研究機構(理研 AICS)の石川裕氏が、ポスト京スパコンについての講演を行った。

日本の次期フラグシップスーパーコンピュータについて講演する理研AICSの石川プロジェクトリーダー

フラグシップ2020プロジェクトでは、ハードウェアの開発は、京コンピュータと同様、富士通が担当することが決まっている。ソフトウェアに関しては、「健康と長寿な社会」、「災害防止と地球的気候変動」、「エネルギー問題」、「工業的競争力」、「基礎科学」といった重点課題に向けてアプリケーションを開発することになっており、それぞれの開発担当が決定されている。

フラグシップ2020では、理研AICSが司令塔で、ハードの開発は富士通、アプリは重点課題ごとに開発担当が決まっている

消費電力、生産性、可用性などを効率的に改善するため、ハードウェアの設計側からアプリケーションを開発する研究者にノードレベルの性能予測を提供し、最適の解を得るために仕様のすり合わせを行うという。

アプリを開発する研究者にノードレベルの性能の予測を提供し、すり合わせを行って最適化する

ポスト京の性能としては、Capacitive Computingでは京コンピュータの100倍、Capability Computingでは50倍の性能を目標とする。Capacitive Computingは、小規模な計算を多数並列に実施する場合で、Capability Computingは全系を使うような大規模計算を実施する場合である。そして、消費電力は30-40MWを目標とする。つまり、性能ターゲットは米国と同じであるが、実現時期が2020年と若干早いことから、消費電力では1.5~2倍を許容するという目標設定となっている。

ハードウェアはメニーコアアーキテクチャで、計算ノードを6Dのメッシュ/トーラスネットワークで接続するという構造で、京コンピュータと同じような構造である。そして、(1)シリコンディスク、(2)磁気ディスク、(3)アーカイブの3レベルの階層的なストレージを接続する。OSは軽量カーネルを使うLinuxに3レベルのストレージをサポートするFile I/Oを扱うミドルウェアを装備する。また、アプリケーション向けのファイルI/Oミドルウェアという記述も見える。並列化はMPIとOpenMPと書かれており、これは基本的には京コンピュータと同じである。また、高生産性プログラミング言語とライブラリと書かれており、ソフトウェアスタックには筑波大学が開発したXcalableMP(XMP)などが想定されている。

ハード的にはメニーコアを6Dメッシュ/トーラスで接続する京コンピュータと似たシステムアーキテクチャ。OSは軽量カーネルを使う点が京コンピュータとは異なる