宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業(MHI)は11月30日、12月1日に予定していた小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げを延期したことを発表した。新たな打ち上げ日時は12月3日(水)13時22分04秒となる。

11月30日15時30分の種子島宇宙センター。雨は降っていないものの、かなりの強風が吹いている

竹崎展望台の前は砂浜になっているのだが、強風のせいで道路はこんな砂嵐のような状況だった

H-IIAロケットの打ち上げ時の制限風速は20.9m/s(最大瞬間風速)となっており、これを上回るときは打ち上げを行わない。今回の中止は、打ち上げの時間帯に射点周辺でこれを超える強風が予想されたためだ。「はやぶさ2」はすでに一度、氷結層のために延期されていたが、今回は氷結層の心配はなく、理由は強風のみだ。

平嶋秀俊・MHI宇宙事業部MILSET長は「前線の通過が予想以上に早まって、吹き返しの風が大きくなる予想」と状況について説明。現時点の気象予報では、12月1日の平均風速は12~14m/sであるが、最大瞬間風速は大体その2倍になるということで、制限風速を超えると判断した。

11月30日発表の気象予測。12月1日は強風が予想される

翌日ではなく翌々日へと延期になるのは、打ち上げ日を関係機関と調整して決めているためだ。決定日から中2日を開ける必要があるので、今日(11月30日)決めた場合、打ち上げ日は最短で3日後の12月3日となるわけだ。たとえ12月2日の天候が良かったとしても、この取り決めにより打ち上げることはできない。

12月3日の天候は現在の予測では曇り。氷結層も強風も心配はないが「信頼度がまだAにはなっていないので、その見極めが必要」(平嶋MILSET長)だという。状況の変化次第では、再々延期の可能性もある。

「はやぶさ2」は軌道の都合で、12月9日までに打ち上げる必要がある。まだ余裕はあるものの、この1週間ほどは天候の回復が見込めず、ちょっと心配なところだ。これについて、長田弘幸・JAXA鹿児島宇宙センター射場技術開発室長は「与えられた期間の中で最大限の努力をして打ち上げるしかない。まだ決して諦めてはいない」とコメントした。

平嶋秀俊・MHI宇宙事業部MILSET長(左)と長田弘幸・JAXA鹿児島宇宙センター射場技術開発室長(右)