トムソン・ロイターは、同社の論文動向分析データベース「InCites Essential Science Indicators(ESI)」と、論文検索・引用索引データベース「Web of Science Core Collection」を用いた独自の分析により、「世界で影響力を持つ科学者(The World’s Most Influential Scientific Mind)」リポートを発表した。

今回のリポートは、高い被引用数をもつ論文データから、各分野を牽引する科学者を特定し、オンライン上で公開するもの。選出は、ノーベル賞予測と目される「トムソン・ロイター引用栄誉賞」を毎年手掛ける同社の引用アナリスト「デービッド・ペンドルベリー(David Pendlebury)」氏らが手掛けたという。

同リポートは、「Highly Cited Researchers(高被引用論文著者)」と「Hottest Researchers(2013年にもっとも注目を集めた研究者)」の2分野で構成している。

高被引用論文著者は、2002年1月から2012年12月の11年間に登録された論文を基にした「世界で影響力を持つ研究者のデータベース」を参考にしている。これは、過去にトムソン・ロイターが提供していた「Highly Cited Researchers.com」の更新版となる。

選出手順は、まず、ESIの研究カテゴリである21分野(自然科学や社会科学を含む)において、被引用数ランキングの上位1%の論文(高被引用論文 : Highly Cited Papers)を抽出し、一定数以上の高被引用論文を持つ著者リストを作成。同リストは、上海交通大学に送られ、各研究者の所属機関などをより精査された後に、トムソン・ロイターによって公開される。

この結果、選出された科学者は約3200名で、日本人は約100名であったという。その中には、過去にトムソン・ロイター引用栄誉賞(ノーベル賞予測)にノミネートされた京都大学の北川進教授や東京工業大学の細野秀雄教授、大阪大学の審良静男教授、東京大学の水島昇教授など、すでに各分野で世界的な権威がおり、研究を牽引している研究者が名を連ねている。

一方、2013年にもっとも注目を集めた研究者とは、毎年発表している恒例のノミネートで、今回は、2012年1月から2013年10月にデータベースに収録された論文を基に、2013年に顕著な被引用数を持つ論文(ホットペーパー)を発表した研究者を対象として選出している。また、同部門において、選出された日本人研究者はいなかった。

同社は、ホットペーパーの定義を、「同社の学術論文情報データベース『Web of Science Core Collection』に収録しているデータをベースとする」とし、選出に関しては、「近年特に注目を集めた研究論文に焦点を絞ることにより、科学コミュニティが生みだす新しい動向とその背後の革新的研究者にスポットライトを当てることができる」と説明している。

なお、今回の分析を同社は、「ESIの分野別に分析・抽出を実施しており、著名な研究者であっても、その研究内容が融合的で分野が複数に渡っている場合などは、各分野で設定されたしきい値に高被引用論文数が達せず、選出から漏れている場合もある。京都大学の山中伸弥氏などはこのケースに当たるというが、これは今回の選出基準の定義によるものであり、今回の選出に漏れていたとしても研究者の評価を損ねるものではない」としている。