コミュニケーションにおける人間らしさを追求した「テレノイド」

続いては、オトナロイドと同じブースのすぐ横にいるテレノイド(画像24・25)。テレノイドはTelephone(電話)やTele-operation(遠隔操作)の遠隔、遠方などの意味を持つ「Tele」に、Humanoid(人間型ロボット)のnoid(~のような)を組み合わせて命名されたロボットだ。

画像24(左):テレノイド。画像25(右):顔のアップ

石黒氏は、コミュニケーションにおける「必要最小限の人間らしさとは何か」ということも追求しており、そこで開発されたのがこのミニマルタイプの遠隔操作型アンドロイドのテレノイドというわけだ。ミニマルが意味するところは、体型や顔つきといった特定の人物の要素を極限といえるほどそぎ落としてデザインしていることで、赤ん坊ぐらいの体型という以外は、性別すら定かでない。そのため、見る人の感情、思い込みといったものが反映されるので、不思議なことに長いこと見ていると、自分が思ってしまった風に、もしくは思いたいように見えてくる。

例えば、電話のような感覚で、お年寄りがテレノイドを抱っこしながら孫と話をしたりすると、孫の顔に見えてくるという。筆者も抱っこさせてもらったのだが、テレノイドのお尻は意外とセクシー!、とかリビドーな感想を持ったとたん、自分自身が「うわ、赤ん坊のお尻を触って喜んでる変態オヤジだ!」とか見えてきて(画像26)、「ということは、テレノイドは女の子なのか!?」などとなり、見えるものが揺らぐこと揺らぐこと(画像27)。そんな不思議な存在がテレノイドというわけだ。

画像26(左):テレノイドのお尻を触って喜んでいるようにしか見えない筆者。画像27(右):どうだろう。こちらの画像のアップが、画像25では性別がわからないような顔をしていたにも関わらず、なんとなく優しく見えて、「女の子では?」などと見えてこないだろうか? ちなみに、本当はこの時、テレノイドが赤ん坊みたいだと感じていて、「そういえば、子供たちが小さかった時、ミルクをほ乳瓶で飲ませたあと、こうやってゲップを出させたなぁ」と思っていた

テレノイドも静かに呼吸しており、展示においては普段はそうした呼吸をしている様子などを見られる「通常モード」となっている。そして、平日のみ15時以降の予定で(混雑状況により休止することもある)、「自由体験モード」が実施となるわけだ。オトナロイドと同様に操作ブースに入ってテレノイドを操作する人と、ソファに座ってテレノイドと対話する人に別れて体験できるのである。テレノイドは動画4をご覧いただければわかる通り、頭はかなり動く。そして、腕もちょっとだけ動く。

動画
動画4。テレノイドの動作の様子

なお操作する場合は、ブースの中でマイク付きヘッドフォンを装着するだけ。これで操作がスタートし首などを動かせるようになる。そしてマイクに向かって話すと、テレノイドが話す形でソファにいる人に音声が伝わる仕組みだ。また、タッチパネルの「ハグボタン」を押すと、テレノイドが対話者を抱きしめるような腕の動きが行われる。モニターの映像は、テレノイドがとらえたものではなく、別のカメラからの俯瞰映像だ。

ちなみにテレノイドは最初の「R1」と呼ばれるモデルが2010年8月にデビューし、これまで次々とバージョンアップを行っている。「R2」(2011年3月)、「R2W」(2012年1月)、「R2l」(2012年3月)、「R3」(2012年11月)、「R3b」(2013年6月)、「R4」(2013年7月)という具合で、さまざまなモデルが開発されてきた。最新版はR4である。各モデルの詳細は、こちらに詳しい。今回のテレノイドは確認しそびれてしまったのだが、外部DC電源、センサとしてマイクで、かなり軽量ということを考慮するとR2のような気がするが、もしかしたら改良型や完全な未来館の要求に合わせた仕様の新型なのかも知れない。