ウェザーニューズの超小型衛星「WNISAT-1」が11月21日(日本時間、以下すべて)、ロシアのヤースヌイ宇宙基地より、ドニエプルロケットにて打ち上げられた。衛星はロケットから分離後、同日20時40分すぎに初めて日本の上空を通過、このときの運用でビーコン信号の受信に成功し、衛星が動作していることを確認した。

幕張の同社グローバルセンターにあるWNISAT-1の運用室

ついに打ち上げられた「WNISAT-1」。超小型の商用衛星だ

今回、ドニエプルロケットには24機もの小型衛星・超小型衛星が搭載されており、WNISAT-1はそのうちの1機として打ち上げられた。同衛星の打ち上げは当初、2012年9月を予定しており、衛星はすでに完成していたものの、ロケット側の事情で打ち上げが遅れていた。

WNISAT-1は一辺27cm、重量10kgの超小型衛星。北極海の海氷を観測するために、民間気象会社のウェザーニューズと衛星開発ベンチャーのアクセルスペースが共同で開発した。海氷の位置を観測して、北極海航路の安全な航行に役立てるのが目的だ。

16時10分11秒に打ち上げられた後、ロケットからの分離を確認。分離のタイミングは予定よりも5秒ほど遅れたとのことで、所定の軌道からは少しずれている可能性もあるが、関係者によれば、観測には問題ないレベルだという。

衛星の地上局は、同社グローバルセンター(千葉市幕張)と東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)の2カ所に設置。衛星と通信できるのは、衛星が地上局の上空を通過する時だけで、1回の運用あたり長くても15分程度であるが、この時間内でコマンドを送信し、データを受信する必要がある。

同日20時40分からの第1回運用では、コマンドの送信は行わず、衛星からのビーコン信号の受信に専念。衛星に何か問題が起きていないか、まずは衛星の状態を知ることが重要となるが、このとき受信したテレメトリデータを解析したところ、バッテリの電圧・温度とも正常値であることが分かった。

運用室のモニター画面。20時40分から第1回運用が開始された

衛星との通信が可能なのは、衛星が円の内側にいるときだけだ

22時18分からの第2回運用においては、コマンドも送信。衛星からの応答もあり、衛星の通信系が正常に機能していることが確認できた。ただ、受信した電波はノイズ混じりで、まだ正常に通信できている状態ではないが、これは衛星の正確な軌道が分かっておらず、地上局アンテナの向きと衛星の実際の位置に誤差があるためと見られている。

第2回運用の終了後、アクセルスペースの中村友哉社長は「衛星の状態は正常。コマンドにちゃんと応えてくれたのが大きな収穫」と、現状について説明。今後、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)からの軌道情報が出てくれば、WNISAT-1を見つけやすくなるので、まずは安定した通信状態の確立を急ぐ。

衛星の"生存"が確認でき、安堵の表情を見せるアクセルスペースの中村社長

WNISAT-1の今後のスケジュールであるが、まず12月から初期運用を開始。衛星の姿勢を確立させ、各機器の動作チェックなどを経てから、2014年1月より本運用に移行する計画だ。