安川電機は8月29日、地域ごとに異なるグローバルのニーズに合わせ、自動車や機械関連部品などを主としたアーク溶接用途ロボット「MOTOMAN-MA1440」(画像1)、自動車業界向けのスポット溶接ロボット「MOTOMAN-MS210」(画像2)および「MOTOMAN-MS165」、ハンドリングロボット「MOTOMAN-MH12」(画像3)および新型コントローラ「DX200」を開発し、9月2日より世界同時発売、販売価格はオープンとすることを発表した。

画像1(左):アーク溶接用途ロボットのMOTOMAN-MA1440。画像2(中):スポット溶接ロボットのMOTOMAN-MS210。画像3(右):ハンドリングロボットのMOTOMAN-MH12

昨今の自動車は「効率」「環境」「品質」をテーマに開発が行われ、そのボディ製造工程においては、高効率・低コスト・低エネルギーのライン構築が進んでいる。中でも、コストミニマムを目指したライン長の短縮や工程数の短縮、また新興国での生産に合わせたライン作りが必要とされている。こうしたニーズに対し、新型アーク溶接ロボット、スポット溶接ロボットは、信頼性・保守性・安全性を重視しながら、高速や高精度、そして高密度配置を実現する「小形・スリム化」を実現したという。

また、産業用ロボットのユーザーは、自動車と電気機械分野が依然として大きな比率を占めているが、食品、医薬品、化粧品の「3品業界」を中心に産業用ロボット活用の裾野が拡大しつつある。このたび発売する新型ハンドリングロボットは、新たな市場の要求に応え、組み立て・搬送の自動化生産設備の生産性向上に対するソリューションを提供するとした。

3種類のロボットおよびコントローラの主な特長について。まず高速・高可搬質量なアーク溶接ロボットのMOTOMAN-MA1440は、(1)溶接工程に応じた最適な艤装を可能にしたこと、(2)高速動作によりロボットの移動時間を短縮させたこと、(3)新型フォルムで使いやすさを向上させたこと、(4)新型コントローラDX200によるアーク溶接機能を向上させたことの4点が上げられる。

(1)の溶接工程に応じた最適な艤装を可能にした点は、従来機種比2倍の可搬質量(従来機種:3kg→新機種:6kg)を実現し、これまで大型機種で対応していた各種センサやサーボトーチを搭載できるようになった。また、1台のロボットでトーチケーブルの内蔵/外付けに対応し、ワーク形状や設備レイアウトに応じて最適な艤装(ロボット本体に、溶接等の用途に必要な器具やセンサの取り付け、ケーブルの配線を施すこと)を選択可能となっている。

(2)の高速動作によりロボットの移動時間を短縮させた点については、軸合成速度(ロボットの6軸すべてが動作した時の速度)が秒速80°高速化された(従来機種:秒速2070°→新機種:秒速2150°)。特にエアカット(ロボットが持つ溶接トーチが、溶接箇所から次の溶接箇所、または待機位置などに空間移動する動作)区間での高速化が図れるため、溶接箇所への移動距離が長い用途、アプローチ回数の多い用途でサイクルタイムを短縮化でき、生産性を格段に向上させられるとする。

(3)の新型フォルムで使いやすさを向上させた点は、流線型アームデザインによりワークや治具との干渉領域を低減し、ロボットをより近接させての動作ができるようになったことから、ワーク背面のこれまで狙えなかった箇所への溶接が可能となった。また手首軸の中空径を拡大し(従来機種:φ42mm→新機種:φ50mm)、ケーブル収納本数を増やせるようにも対応している。

(4)の新型コントローラDX200によるアーク溶接機能を向上させた点は、最適な溶接電流・溶接電圧の設定を簡易化する「溶接条件ガイド機能」や「リアルタイムアークモニタ機能」により、アーク溶接機能が向上している。

次にスポット溶接ロボットMOTOMAN-MS210およびMOTOMAN-MS165について。(1)新制振制御により高速化を実現させたこと、(2)高密度配置を可能とする小形・スリム化を実現させたこと、(3)可搬質量のアップと省線化を実現させたこと、(4)新型コントローラによるスポット溶接機能の向上が図られたことの4点だ。

(1)の新制振制御により高速化を実現させた点については、構成部品の軽量化と駆動機構の剛性アップ、新型コントローラの新制振制御により軸速度を最大25%アップし、同社比最大で30%のサイクルタイム短縮を実現した。新開発のセンサレス学習制御機能でさらに10%のサイクルタイム短縮が可能だ。

(2)の高密度配置を可能とする小形・スリム化を実現させた点については、まず「ガスバランサ」とスリムアーム採用によりロボット幅を25%削減している。なおガスバランサとは、ロボットのアームの自重と反対方向へ圧縮ガスでバランス力をかけることで、アーム昇降時や保持時のモータ負荷を軽減するためのシリンダーのことである。従来のバネ式よりコンパクトでバランス力の高い窒素(N2)ガス充填式が採用された。また、ベース小型化によりフットプリントを43%削減し、さらなる高密度配置による生産性向上が可能だ。

(3)の可搬質量のアップと省線化を実現させた点については、スポットガン艤装時の可搬質量210kgを実現し、大型スポットガンへの対応が可能となった点が挙げられる。また艤装ケーブルのモジュール化、パワーケーブルの省線化(従来機種:2本→新機種:1本)により、メンテナンス性の向上も実現している。

(4)の新型コントローラによるスポット溶接機能を向上させた点については、異なる仕様の電動ガンを最適に制御する「電動ガンオートチューニング機能」を装備したほか、ティーチングや電動ガンセットアップを簡易化する機能などが充実した。

続いて、自動車関連部品、携帯電話、パソコン関連、家電機器などを主とした組み立て・搬送用途のハンドリングロボットMOTOMAN-MH12について。(1)可搬質量12kgでクラス最高速を実現させたこと、(2)高速化と作業エリア拡大による生産性の向上させたこと、(3)スリムなボディで装置組み込み性を向上させたこと、となっている。

(1)の可搬質量12kgでクラス最高速を実現させた点については、可搬質量が従来機種6kgから今回の12kgへと大幅にアップさせ、クラス最高速の動作性能を実現させた。

(2)の高速化と作業エリア拡大による生産性を向上させた点については、流線型の干渉レスアームが採用されたことで搬送物との干渉は低減、作業領域は拡大され、生産効率が向上している。

(3)のスリムなボディで装置組み込み性を向上させた点については、ハンドリング用艤装ケーブルや部品をコンパクトに収納・搭載可能な構造が採用され、組み込み装置のコンパクト化、省設置スペース化に貢献している。

最後の新型コントローラDX200について。(1)安全機能を強化したこと、(2)省スペース化を実現するキャビネット設計を採用したこと、(3)コントローラ内部の省配線化でメンテナンス性を向上させたことが特長だ。

(1)の安全機能を強化した点については、ロボットの動作条件やワークサイズ、作業者との距離に応じて稼働中に切り替え可能な速度領域制限機能、ツール切り替え監視機能、速度制限機能など、ソフトウェアによる安全機能(機能安全)が強化されている。

(2)の省スペース化を実現するキャビネット設計の点については、従来は付加ロッカーに収納されていた外部軸制御(3軸)や機能安全などのオプションを内蔵可能なコンパクトな標準キャビネットに、2台目のロボット制御やカストマ電気品を組み込んだ付加キャビネットを段積みで追加できるため、コントローラ設置面積の最小化を図れる点だ。

(3)のコントローラ内部の省配線化でメンテナンス性を向上させた点については、コントローラ内部は最適なユニット配置と省配線化を図り、オプション装着後も外観が損なわれず、ユニット交換などのメンテナンス作業を容易にした点となっている。