小さい頃にレゴブロックを使って遊んだ経験がある人は多いだろう。しかし、成長するにつれて次第に遊ぶ機会が少なくなり、今はもうめっきり触っていないという人が多いのではないだろうか。筆者もそうだった。

幼少期は兄弟とレゴで頻繁に遊んでいた記憶があるが、F1レースのピットを作るセットをあてがわれたにも関わらず、勝手にお風呂場を作ろうとするような規格外の女児だったし、そういえば「レゴの作り方」について習ったことは一度もない。ただ漠然とブロックを上へ上へと積み上げていたような気がする(そしてバスタブを作るにはブロックが足りなかった)。

そんな、レゴについて深く関わってこなかった大人にうってつけのレゴ入門イベント「大人のレゴ教室」が、東京都・お台場の「レゴランド・ディスカバリー・センター東京」で開催されている。今回は、初回開催の教室にお邪魔して、世界に10人しかいない"レゴ職人"、マスター・ビルダーのひとりである大澤よしひろさんのレクチャーを受けてきた。

レゴの組み立て方を改めて学ぶ

教室内は満員御礼。おひとり様もグループ参加の人たちも熱心にレゴに取り組んでいた

講師を務めるマスター・ビルダーの大澤よしひろ氏

「大人のレゴ教室」は2013年3月に初めて開催された、レゴ初心者の大人を対象にしたイベント。初回のチケットは即完売してしまったという人気ぶりで、次回の開催を望む声が多かったことから、5月~7月の3カ月間、月1回の開催が決定したという。

講師は、世界で10人しかいないレゴ職人「マスター・ビルダー」の大澤よしひろ氏。普段は子供たちにレゴの楽しさを伝えている同氏が、かつての少年少女たちに優しくレゴの使い方を教えてくれる。

まず教わるのは、レゴブロックについての基本的な知識。ブロックの表側についている丸い突起物が「スタッド」、裏側にある筒が「チューブ」という。ただ、日本では分かりやすさを重視し、「スタッド」のことを、「ポッチ」と呼ぶこともあるという。

ブロックの「スタッド(ポッチ)」(左)と「チューブ」(右)

続いて、公式で認められているレゴブロックの組み合わせ方の実演が行われた。ブロックの組み方くらいはさすがに分かっているものと思い込んでいたが、薄いプレートを、もうひとつのブロックのポッチとポッチの隙間に入るよう挟み込む手法が披露されて度肝を抜かれた。ただ積み上げるだけではないテクニックを教わり、この時点でレゴに対する興味がグッとと高まった。

手が滑って挟まったわけではなく、これも正しいレゴの組み立て方

ブロックは1人ひとつ割り当てられたボウルに入れて扱う

こういったテクニックのほか、レゴブロックに関する豆知識もいくつか語られた。中でも、レゴの色に関する話が印象的だった。最初に発売されたレゴの色は、赤と白の2色だけ。その後にさまざまな色が追加されていったのだが、緑色の追加時期は遅かったという。それは、緑が「戦車を作るために必要な色だから」とのこと。子どもの夢を壊さないために、という配慮だったのだそうだ。

レゴの色にまつわるエピソード

レゴにはさまざまなパーツがあるが、大きさや長さがそろえられている

レゴ同士が外れなくなった際に便利な道具も近年販売されている。ただし、キット内に同梱される物でばら売りはされていないそう

筆者が完成させたレゴの球体。見た目のシンプルさと裏腹に、自分ひとりでは絶対に考えつかなかったような組み立て方だった

そして、いよいよ手を動かす場面に。受講者がひとりで「球体」を作るためのレクチャーが始まった。四角いブロックから球体を作るというのはなかなか想像がつかなかったが、大澤さんの手引き通りに作っていったところ、ドット絵で円を表現するような要領で球体を作ることができた。この球体に使ったブロックは、作り方のプリントと一緒にお土産として配られたので、家に帰っておさらいすることもできる。

山盛りのレゴを前に大人が熱狂

そして、ラストはフリー制作タイム。会場内にある山盛りのレゴブロックを使って、自分の名前や雑貨などを組み立てるという時間が設けられていた。子どものころ、ブロックが足りなくて作れなかったバスタブをはじめ、あんな物やこんな物も、これだけあれば作れるかもしれない。筆者もひとりでエキサイトしていたが、周りの参加者の方々もまた、嬉々としてレゴブロックを漁っていた。山盛りのレゴを前にした時の言い様のないワクワク感は、童心に返るという一言では表せないインパクトだった。

大人達が箱に山盛りのレゴに飛びつく。何とも言えない平和的な光景

平面、および立体でアルファベットを作ってみたが何とも言えない出来に……

子供用の教室で作られた、おひな様とお内裏さま

何でも作れそう、と夢を膨らませてみたものの、実際のところ、大澤さんが「一番作りやすい」と太鼓判を押していたアルファベットを作るのもおぼつかない始末。子供向けの教室で作った作例が見本として回されてきたが、どうやってこんな可愛い物の作り方を発想したのかさっぱり分からない。レゴで作品を作る難しさ、レゴの作品制作を仕事にしているマスター・ビルダーの偉大さを嫌というほど思い知ったのだった。

ちなみに、「レゴランド・ディスカバリー・センター東京」館内は子供向けの遊具が大多数だが、レゴで作られた東京の街並みなど、つい見入ってしまう作品も多い。この教室は夜間の開催のため、比較的落ち着いた雰囲気の中で作品を眺めることができた。

取材に行ったはずが本気でレゴ遊びに興じてしまった手前、読者の方々もぜひ参加してみては……と言いたいところなのだが、6月6日現在、この教室のチケットは最終開催の7月分まで完売している。これだけ人気のある催しなので、またぜひ近々で開催してほしいところだ。

レゴで作られた東京の名所

フジテレビの社屋

レインボーブリッジと周辺の湾岸地域

東京スカイツリー

アサヒビールのスーパードライホール

渋谷のスクランブル交差点