SIJテクノロジと大阪大学(阪大)産業科学研究所の竹谷純一教授および岡本敏宏准教授は1月29日、有機トランジスタの性能を左右する有機半導体薄膜の結晶性を向上させる、超微細インクジェット(スーパーインクジェット:SIJ)を使った高性能有機半導体薄膜の塗布技術の開発に成功したと発表した。

近年、プリンテッドエレクトロニクスあるいはフレキシブルエレクトロニクスの実現に向けて、有機半導体材料や有機トランジスタの開発が進められているが、有機半導体は一般にはシリコンなどの無機半導体に比べキャリア移動度が劣ると言われている。

原因としては、有機分子の配向方向がバラバラな多結晶状態や結晶性の無いアモルファス状態であることが考えられており、実際に有機単結晶を用いた移動度の測定結果においては、無機半導体に匹敵するような高い移動度の報告もある事から、結晶性が高く、方位がそろった有機半導体薄膜を得ることが、高性能な有機半導体の鍵であり、効率よく結晶性の高い有機薄膜を形成する方法が求められていた。

従来の配向した有機薄膜を得る方法としては、インクジェットで貧溶媒を滴下する方法が主だったが、溶媒の乾燥までに時間がかかること、また事前のパターニングが必要で局所的な塗布に限界があるなどの問題が有った。

今回、研究グループが開発した技術は、従来の1/1000以下の超微細液滴を吐出可能なSIJ技術を用いることで、有機半導体の溶液を基板上に精密に吐出することで、方向のそろった単結晶の薄膜を効率よく作成しようというもの。結晶の大きさ・方位はインクの出し方、塗布方向の制御などによって調節が可能であり、高速に、高品位の薄膜が形成可能であるほか、限られた領域に局所的に高品位結晶を形成できる事から、高価な有機半導体材料の使用量を削減する事もできるようになるという。

また、得られる薄膜が薄く微細な領域のため、フレキシブル基板上に形成した場合でも、割れなどの問題も生じにくく高い適合性を持つと考えられるという。

実際に作られた高品位有機半導体結晶を用いてトランジスタを形成したところ、従来の真空プロセスで作られた多結晶状態の結晶を使って作成したデバイスに比べ、およそ5倍のパフォーマンスが確認されたという。