アルバックは7月10日、電動アシスト自転車充電ステーション「ハイブリッドサイクルピット」を茅ヶ崎市の茅ヶ崎公園内に設置し、稼働を開始した。ハイブリッドサイクルピットは、小型風力発電と太陽光発電の再生可能エネルギーを利用した電動アシスト自転車充電システムであり、発電した電力をリチウムイオン2次電池に蓄電し、電動アシスト自転車のバッテリの充電を行う。

ハイブリッドサイクルピット稼働式典のテープカット風景

行政と地元企業の連携

今回のハイブリッドサイクルピットの設置は、アルバックと茅ヶ崎市の協業による2件目の事例となる。アルバックと茅ヶ崎市の協力関係は、住民からの要望を行政側の茅ヶ崎市が地元企業であるアルバックに提案し、アルバックがその要望を具現化し事業展開を行うというもの。最初の展開は低炭素社会の実現に向けた取り組みとして、2010年1月に太陽光発電パネルと急速充電器を組み合わせた電気自動車向け充電システムの開発し、茅ヶ崎市営駐車場に同システムを設置したものとなっている。

茅ヶ崎市では「ちがさき自転車プラン」を定め、まちづくりの重要な施策として自転車の利用促進に向けた交通政策を実施している。また、低炭素社会に向けた取り組みに加え、今後の高齢化により、電動アシスト自動車への需要増を見込んでいる。茅ヶ崎市長 服部信明氏は、「電動アシスト自転車利用者の利便性の向上と、電源確保が難しい場所へ充電設備を設けるために、アルバックに提案した」と今回の経緯を語った。

アルバックとしても、ハイブリッドサイクルピットが「ちがさき自転車プラン」の新たなキーステーションとなることを期待しており、同社社長の諏訪秀則氏は、「今後も再生可能エネルギーを活用したクリーンエネルギー社会の実現を目指し、製品開発とビジネスを強化していく」と抱負を語った。

茅ヶ崎市長 服部信明氏

アルバック 代表取締役社長 諏訪秀則氏

約10台の電動アシスト自転車の充電が可能

ハイブリッドサイクルピットは、発電・蓄電・充電の3つのシステムで構成されている。

太陽光発電部は、充電ステーションの屋根に三洋電機の太陽光発電パネル「HIT」を8枚設置し、発電能力は1.6kWとなっている。また風力発電部は、充電ステーションの脇にゼファーの小型風力発電機システム「エアドルフィンプロ」を設置し、発電能力は約1kWとなっている。太陽光発電と風力発電を合わせて2.6kWの発電能力を有する。

ハイブリッドサイクルピットの全景

ステーションの屋根に設置された太陽光発電パネル

小型風力発電システム

リチウムイオン2次電池はエナックスの容量10AhのGタイプセル「ENG-XE10」を組み電池にした状態で使用し、約2.8kWhの容量を実現している。また、AC100V/600Wのインバータを採用している。充電ステーションには5個の電源コンセントを設けており、同時に5台の電動アシスト自転車の充電が可能となっている。充電の際には、電動アシスト自転車からバッテリを外し、ステーションの電源コンセントに接続した充電器にバッテリを差し込み、充電後にはバッテリを自転車に戻して使用する。

電動自転車充電盤

充放電コントロールユニット(上)とリチウムイオン2次電池(下)

充電器が接続された電源コンセン

バッテリ充電のデモを行う衆議院議員 河野太郎氏

一般的な電動アシスト自転車のバッテリ容量を4Ahと考えると、太陽光発電ができない夜間や風力発電ができない無風状態でも約10台分の電動アシスト自転車の充電が可能となっている。

電力ライフライン停止時にも発電が可能

今回のシステム稼働は当初、3月20日に予定されていたが、東日本大震災の影響により延期された。このため、災害時の利用を想定した設計が新たに加えられた。

ハイブリッドサイクルピットは、2つの異なる再生可能エネルギーを利用するため、電力会社の配電網から独立したシステムとなっている。このため、大震災のように電力ライフラインが停止する事態になっても、太陽光と風があれば発電可能で電力を供給できる。ステーションに設置されている電源コンセントは家電製品の使用も可能で、災害時でも夜間の灯りが確保できる。大震災時に需要が多かった携帯電話については、容量3.6Whのバッテリで約1000台の充電が可能という。

家電製品の使用も可能