Intelのフェローで研究所のExascale Technologies部門のディレクタであるShekhar Borkar氏が、COOL Chips XIVの開会直後に最初の基調講演を行った。タイトルは"The Truths & Myths of Embedded Computing"であり、日本語では、「組み込みコンピューティングの真実と迷信」といったところである。

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Borkar氏は、縦軸は処理の柔軟性、横軸にコストや消費エネルギーをとった次の図を示し、処理が柔軟で汎用的に何でもできるがコストや消費エネルギーが大きいのが汎用システムで、処理の柔軟性は低いが、その処理に最適化してコストや消費エネルギーを減らしたシステムを組み込みシステムと定義した。

縦軸は処理の柔軟性、横軸にコストや消費エネルギーを取り、左下が組み込み、右上が汎用コンピューティングと分類

そして、組み込みコンピュータは、性能が低いとか古い半導体テクノロジを使っているとかいうのは迷信で、アプリケーションに最適のテクノロジを使っているというのが真実である。組み込みコンピュータは低消費電力であるというのも迷信で、用途に対してエネルギー効率を最適化しているというのが正しい。また、組み込みコンピュータの仕事をするのはクールではないというのも間違った考えで、メインフレーム全盛のころはおもちゃのようなマイクロプロセサの仕事はエンジニアの憧れの仕事ではなかったと述べた。

ここまでは良いのであるが、スーパーコンピュータもその用途に対して最適化されており、演算あたりのコストや消費電力は汎用システムに比べると小さく、制御用などの組み込みシステムに近いレベルにある。ということで、スーパーコンピュータは究極の組み込みシステムであると言う。筆者などは、この定義には多少違和感があるのであるが、このレポートではBorkar氏の主張を紹介していく。

ギガからエクサへのスパコンの性能と演算あたりのエネルギーの推移と予測

右上のグラフの下側の線は単体プロセサの性能向上の線で、この性能向上では必要とされる上側のシステム性能の線に達しないので、テラの時は36個、ペタの時は4000個を必要とした。これがエクサでは250万個の並列度が必要になる。

現状では1TFlopsのシステムは、ディスクなどのI/Oや電源ロス、空調電力などを含めると5kWになり、この比率で1ExaFlopsを作ると5GWになってしまう。2018年の8nmプロセスを想定してみると、20mm角のチップに1150コアを搭載し、4.61GHzクロックで10.6TFlopsの性能を持つプロセサが造れるが、消費電力は300~600Wと見積もられ、CPUチップだけでTFlopsあたり30~60Wとなる。

このCPUチップに512GBのDRAMを接続した計算ノードを考えると、TFlopsあたりの消費電力は110~140Wとなる。

2018年の8nmプロセスのCPUチップの予想

これに対して、米国DARPAのUHPCプロジェクトの目標は1TFlopsあたり20W、1PFlopsの筐体で20kW、1EFlopsのシステムは20MWというものであり、この見積もりの1/5~1/7に消費電力を減らす必要がある。