事業再編のポイントは3点

今回の事業再編における基本的な考え方は「お客様接点の強化による価値創出の最大化」、「スピーディで筋肉質な経営の実現」、「大胆なリソースシフトによる成長事業の加速」の3点であるという。

同社ではこの考えのもと、共通技術基盤をベースにした従来の5セグメント体制から、顧客を起点としたビジネスモデル別の3事業分野(「コンシューマー」「ソリューション」「デバイス」)に再編を計画している。再編後のグループ全体の体制は、あらゆる事業を整理することで、3事業分野、9ドメイン、1マーケティング部門へと変更され、各事業分野で、顧客起点の最適なビジネスモデルを構築し、各ドメインはグローバルに自主責任経営を徹底するとしている。

また、縦方向で個別事業を徹底的に強化し、横方向で同社グループならではの総合力を追求するという縦・横両面で、グループポテンシャルの最大化を図ろうという試みも含まれている。

事業再編の方向性と新グループ体制の枠組み

各分野の成長戦略としては、「コンシューマー事業分野」では、マーケティング力の強化により、世界各地のそれぞれのニーズにあった商品の提供を行っていく。また、「AVCネットワークス」および「冷熱アプライアンス」の両ドメインは、それぞれ、現在のAVC社、HA社を中心に、三洋および電工の関連事業を再編した組織となる予定で、「グローバルコンシューマーマーケティング部門」には、3社の国内外コンシューマ営業部門が統合される予定となっている。

コンシューマー事業分野は「AVCネットワークス」および「冷熱アプライアンス」、「グローバルコンシューマーマーケティング」の3ドメインに集約

中でもAVCネットワークスでは、ネット接続商品の拡大、シナジー創出、新興国攻略による事業基盤の拡大を見込んでおり、商品のみならずサービスの面でも収益を生むことを目指した新しいビジネスモデルの構築が図られるほか、三洋とのシナジー創出により、プロジェクタやタテ型ムービーなどで新規市場の開拓を図るとする。

AVCネットワークスはネット商品・シナジー創出・新興国で事業基盤の拡大を狙う

加えて、新興国攻略の加速に向けて、開発・生産の現地シフトを行うことで、各国でのボリュームゾーン商品群の強化を図るとしており、これらの取り組みにより、2012年度には、売上高2兆1000億円以上と営業利益率3.9%アップの実現を目指すとしている。

一方の冷熱アプライアンスの成長戦略の柱は、セット商品の海外展開加速とする。特に環境コア技術をベースに、地域密着型商品で需要を創造することで、2015年度には、海外販売比率を60%まで高める計画とするほか、調理小物商品や美容・健康商品のグローバル増販に取り組み、スモールアプライアンス事業として、統一コンセプト、統一デザインで群展開していくとする。

冷熱アプライアンスは海外展開の加速などに加え、BtoB事業の拡大などを狙う

また、BtoBの事業は、三洋の強みをベースに拡大を図る計画で、大型空調事業やコールドチェーン事業を強化することで、「店舗まるごと」の展開につなげていく計画。

なお、三洋との事業重複の解消などにより、売上高は、一時下がる見通しだが、思い切った海外シフトや体質強化などにより、利益率は2010年度比で、2.5%向上する見込みだという。

特に、海外シフトの取り組みとしては、「新興国での大増販」、「未開拓地域の攻略」、「欧州事業の本格化」にあるとしており、そのためにグローバルなモノづくり基盤を強化する。インド、ブラジルでは、2012年にエアコン・冷蔵庫・洗濯機の新工場を建設、国内需要への対応に加えて、それぞれ、アフリカ、北米への展開につなげる計画。

「新興国での大増販」、「未開拓地域の攻略」、「欧州事業の本格化」の3つに取り組むことで、海外でのセット製品の成長を目指す

加えて、海外での設計開発機能を強化する方針で、ベトナムについては、R&Dを含めた、アセアンの中核拠点として、拡充を図っていくとしている。

その一方で、社内外のリソースを活用した、事業展開のスピードアップにも注力し、ブラジルについては、日本・台湾との「超地域連携」による商品開発および生産立上げを加速するとするほか、地域ごとの商品陣容拡大に向けたOEMの積極活用が提言されており、これらの取り組みにより、2010年度から2015年度にかけて、セット商品の海外年率2ケタ成長を実現していくとした。