マイコミジャーナルにて連載中の「創作番長クリエイタ」の作者である青池良輔が、「Adobe Flash CS4」のファーストインプレッションを語る。Flashアニメの第一人者は、クリエイターとしてAdobe Flash CS4をどう見ているのだろうか?

「Flash CS4」でイタリアのMTV向けのデモ作品を制作

青池はカナダを拠点に日本だけでなく、様々な国に向けコンテンツを制作している

――青池さんはもうFlash CS4を使ってお仕事をされているのですか?

青池良輔(以下、青池)「はい。発売直後にFlash CS4に触れる機会がありました。たまたま、その時に依頼されていた仕事にFlash CS4の新機能が活かせそうだったので、早速使わせてもらいました」

――Flash CS4のどの新機能を活用して、どんなお仕事をされたのですか?

青池「インバース・キネマティックですね。それを使って沢山のキャラを効率良く動かしたかったんです。ある会社と共同で企画していたイタリアのMTV向けの短編アニメ作品があったんです。CS4がリリースされた段階でデザイン、企画、脚本まで完成していたので、そのデモを作って先方に見せるという段階で使いました」

――以前から青池さんは、「ツールの機能は使いこなしていないので、それほど新しい機能に作品は左右されないと」発言されていました。実際はどうだったのでしょうか?

青池「うーん(笑)、左右されちゃいました(笑)」

――具体的には、どんな部分でしょうか?

青池「webベースで、『キャラクターをここで動かしといてください』という仕事が来たとしたとき、合格点を貰う仕事を仕上げるには圧倒的に楽になったと思います。今回のような本番前のデモ制作で、『キャラクターを沢山動かして見せる』というような場合には、制作工程がかなり楽になりましたね」

わかっている人向けのツールに進化した

――ツールとしての印象に大きな変化はありますか?

青池「CS4になって、アドビがクリエイターに求めてる物というのが、モーショングラフィックだったり、webベースでもっとリッチなコンテンツを作るという方向だと思うんです。それはヒシヒシと感じました(笑)。グラフィックもオブジェクト指向になっているし、昔みたいに白紙のスケッチブックとサインペンを渡されたような気軽さとは違いますね」

――「気軽さがない」という部分をもう少し詳しく教えてください。

青池「CS4では、クリエイターも考え方を変えないといけないなというのは感じます。アニメを作るとき僕は、フレーム・バイ・フレームで一歩、一歩作っていく感じだったんです。キー・フレームを決めて、『ここで動かして、次はこうしよう』みたいな……。『それで後で調整しましょう』という流れだったのですが、オブジェクトベースだと、モーションデザインにしても、『X軸やY軸がこうなったら、こういうバウンスの動きになる』というような理屈がわかってる人じゃないと出来ないので、そこが違うなあと……。完全にわかってる人向けのツールという感じですね。便利ではあるんですよ、『この位置でこうなって、こうなる』みたいなスムーズな動きを作るには最適です。でも、そのスーと動くモーションの間にクリエイター個々の情念や遊びみたいなものを込められる感じが、まだないんです。僕も使い始めてまだ日が浅いので、それはこれから勉強していく感じですね」

――「勉強」と言われましたが青池さんの制作スタイル自体に変化は出てきそうですか?

青池「僕個人はまだわからないですが、一般的に変化は出るかもしれません。CS4の連携機能は良くなっているので、Flashもそうなるような気がします。他のアプリケーションで作業したら大変なアニメーション部分を、Flashでやるとか、背景デザインは、「Photoshop」か「Illustrator」で作って、最終的にそれを全部「After Effects」に放り込む。そういう作り方に変わってくるかもしれません。クリエイターは素材だけ作って、最後はもっと得意な人に任せるとか……」

――それは青池さんにとっては良い事なのでしょうか?

青池「わからないですね。便利になった分、没個性に陥る可能性もあるけど、皆が没個性に流れてくれれば……(笑)。便利さばかりがアピールされてますが、不便さと自由さは、僕にとっては同じ意味という気もするんですよ。個性って、めんどくさい作業に出てくるから、ツールをめちゃくちゃに使い倒した後に生み出される作品が面白いと思うんです。たとえば、3D機能の強化によって、これまでは手書きでヘビを斜め45度から描いていた人が、『めんどうだ』と真横から見たヘビしか描かなくなったら、作品としてつまらないものになってしまうと思います」

――インバース・キネマティック、オブジェクトベースのアニメーション制作、3D表現など、アニメーション機能の強化がFlash CS4ではアピールされていますね。青池さんは、今後Flash CS4をご自身の作品制作にどう活用していくのでしょうか?

青池「CS4で『アニメーション機能が強化されました』といわれている場合のアニメーションと、僕が言うアニメーションというのは違うアニメーションなんです。そこに軽い違和感は感じてます。ニュアンスなんですが、アドビが言う部分は「モーション=動き」に関してだと思うんです。そこは、間違いなく凄いと思います。でも、僕が言うアニメーションというのは『アニメイトされた画で何かを語る事』なんですよ。アドビメーションみたいな感じでモーションを指す造語をアドビが作ってくれればいいんですけどね。ただ、今回のアップデートで、今まで見たことないようなFlashアニメ作品を誰かが作ってくるんじゃないかという期待感は確かにあります。僕としては、Flash CS4の新しいルールが沢山出来てきたので、その新しいルールを守るのではなく、破る方法を探しているといった感じですね」

青池良輔

1972年、山口県出身。大阪芸術大学映像学科卒業後、カナダに渡り映像ディレクター、プロデューサーとして活動。その後、Flashアニメで様々な作品を発表。短編アニメやCFを多数手がける。代表作に『CATMAN』(2002年)、『OH!スーパーミルクちゃん』(2002年 ※Flash版キャラクターデザイン)など。最新作は『CATMAN Series III』(2008年)、『ペレストロイカ ハラペコトリオの満腹革命』(2008年)。カナダ在住。マイコミジャーナルにて『創作番長クリエイタ』を連載中(※画像は久利英太)

撮影:岩松喜平