2050年までに石油依存ゼロに

現在、ストックホルム市は、2050年までに石油・石炭への依存をゼロにするという野心的なイニシアティブ「Fossil Fuel Free City」を進めている。

ストックホルム市のプログラムで、地元企業も参加して、2050年にCO2換算排出量ゼロを目指すものだ。ストックホルムでは1990年から2005年、CO2換算排出量を1人あたり5.3トンから4トンに減少させることに成功した。このペースを維持して、ゼロを目指すという(参考までに、EDMC/エネルギー・経済統計要覧2008年版によると、日本1人あたりCO2排出量は、2005年時点で9.8トン)。

これに付随して、公共機関では2010年までに代替エネルギーに移行、税制での奨励策やグリーンエネルギートレード、公共建物におけるエネルギー利用を10%削減、新しい20都市区に200億ユーロを投資、などさまざまな目標や計画を敷いている。

2020年までの目標だけを紹介すると、エネルギー効率を20%改善、住宅・商用施設における暖房での石油依存をゼロに、車でのガソリン/ディーゼルの利用量を40 - 50%削減、産業活動における石油利用を25 - 40%削減、とのことだ。

無理のない取り組みを

Business Region Development(SBRD)のディレクター Asa Bergstrom氏

Bergstrom氏は、環境に対する取り組みが発達していることについて、次のように分析する。「個人単位で環境に責任を感じており、日常生活の中に"自然を大切にする" "環境を守る"といった考え方が刷り込まれている。毎日の取り組みこそ、環境に大きな影響を与えられる。さらには、ライフスタイルをエコフレンドリーに変えていくことができる」 - だが、個人だけでは不十分で、業界や政府の責任において規制や税制が必要だと続ける(ストックホルム市には通行税が導入されている)。

政府の役割では、啓蒙も重要だ。「重要なことは、市民が容易に参加できるようにすること」と強調する。そうすれば、世代が変わるごとに取り組みを前進できる。容易に参加できるインフラ構築に投資するのは政府の責任と考えているが、廃棄物処理などでは、市民の要求レベルが市の対応レベルを上回っていると感じているのだそうだ。

環境問題に技術で対応することで、経済効果を生むことに成功しているが、「技術だけでは不十分」とBergstrom氏。技術を実際に利用する方法、適用・応用する方法も重要なのだという。逆に言うと、その視点がなければ新しい技術は定着せず、ビジネスに結びつかないということかもしれない。

「スウェーデンは小さな国」とBergstrom氏。国内市場が小さいので、輸出に依存している(70%が輸出産業)。そのため、「革新は我々の伝統。役立つ技術を開発しているのか、時代からみて正しいことをやっているのか、適切にトレーニングしているのか、適切な人をひきつけているのか、これらは永遠の課題」とBergstrom氏。これが健全性につながっているように思えた。