こうした可用性、管理性の向上のほか、物理サーバ数を減らすことによるグリーンITに対する貢献も多いのだという。「サーバそのものの消費電力もそうですが、20台のサーバがフル稼働しているとなれば、サーバルームの冷房やラックの冷却ファンなどの消費電力も増大するでしょう(注1)」と郷氏は語る。

(注1)統合前サーバ20台超の消費電力を300Wh/台、統合後物理サーバ2台の消費電力を350wh/台として、24時間365日稼働を仮定した場合で、東京電力公表の電力のCO2排出係数0.425kg/kWhと林野庁による50年杉のCO2吸収量データ14kg/年をベースとするとき、年換算で19.7t(樹木のCO2吸収能力に換算すると、1409本分)のCO2削減に貢献している計算になるという。

また、物理的な課題としてはサーバの集約が果たせているため、サーバルームのスペースに余裕ができたことも大きなメリットだという。「どうしても物理サーバを導入しなければならないケースは常に存在します。しかし、現在のシステムでも2台の物理サーバで20台の仮想マシンを稼働させていますから、その分省スペース化を実現することで、必要なリソースを必要な個所へ余裕を持って用意できる体制が整ったと思います」と郷氏は語る。仮想化は設置スペースの縮小や省エネに対しても貢献度が大きなシステムと言えるだろう。

同社では、それだけにとどまらず、各部門のIT担当者に対しても仮想技術の活用を浸透させる活動を行っている。「弊社の各部門はそれぞれ使いたいアプリケーションが異なっているため、部門ごとにIT担当者がいます。仮想化について理解を深めてもらうため、彼らを対象とした勉強会を開催しました」と郷氏。仮想化システムを利用することになる実際のユーザーにその効果が伝わらなければ、せっかくの環境がムダとなることも考えられる。そのため、クラリオンではシステムの導入を担当した日立電線ネットワークス、ネットワールドと共に勉強会を開いたのだ。こうした活動は、仮想環境に対してより深いリテラシーを植え付けることに貢献し、社内に活用していこうという意識を浸透させることができるはずだ。

クラリオン経営推進本部
SCM推進部 情報企画グループ
郷修治氏

「すでに仮想環境に移行しているシステムもあります。その環境を活用しているユーザーは、何事もなかったかのようにサーバ使えているのです。レスポンスに関しても指摘されることはまったくありません。仮想化に対して違和感なく取り組めている現実を考えれば、今後はさらなる仮想環境の活用をユーザーと一緒になって考えいきたいですね」と郷氏は語る。

また、最後に今後の取り組みに対して中村氏は「今回の構築において仮想基盤の基本部分が完成し実績を積み重ねることもできましたので、これを更に拡張しながらさらなるサーバ統合を進めていきたいですね。また、弊部含め各部門から新規サーバの要請があった場合も、原則まずは仮想サーバを検討する様な形にしていきたいと考えています。将来の構想の中では可用性という面で遠隔地縮退環境でのディザスタ・リカバリを実現するVMware Site Recovery Managerや、先般開催されたVMworld 2008において発表された、ダウンタイムゼロでのフォールト・トレランス機能や管理機能の充実といった拡張が施される次期VMware Infrastructureシリーズにも非常に注目しています」と語った。