2018年に予定されている、注目のロケットの打ち上げや、衛星、探査機の活動を紹介するこの連載。第1回では1月から4月までの第2回では5月から8月までの予定について紹介した。

第3回では9月から12月までに予定されている、米国の傑作ロケットの引退や、欧日の水星探査機の打ち上げ、ISSに結合されるロシアの新しいモジュール、そして月の裏側に着陸する中国の探査機などについて紹介する。

9月12日:「デルタII」ロケット、最後の打ち上げ

長年、米国の宇宙開発におけるワークホースとして活躍した「デルタII」(Delta II)ロケットが、ついに最後の打ち上げを迎える。

デルタIIは1989年にデビューし、数多くの軍事衛星や惑星探査機、商業衛星を打ち上げてきた。これまで155機が打ち上げられ、失敗はわずか2機と、高い信頼性を誇る。

一方で設計が古くなり、また後継機の「デルタIV」が登場したこともあって、すでに生産は終わり、今年の打ち上げをもって運用を終える。

最後の積み荷となるのは、NASAの地球観測衛星「アイスサット2」(ICESat-2)。高性能なレーザー高度計を搭載しており、陸や海にある氷や植生の高さを高精度で観測することを目的としている。

  • 「デルタII」ロケット

    「デルタII」ロケット (C) NASA

10月5日:欧日共同開発の水星探査機「ベピコロンボ」の打ち上げ

太陽に最も近い惑星である水星。太陽に近いことなどから、地球からの観測や探査機による探査が難しく、いまだ多くの謎が残されている。

その謎の解明に挑むため、欧州宇宙機関(ESA)とJAXAが共同開発したのが、探査機「ベピコロンボ」(BepiColombo)である。

ベピコロンボは、ESAが開発した「水星表面探査機」(MPO)と、JAXAが開発した「水星磁気圏探査機」(MMO)の、大きく2機の探査機から構成される。このほか、水星までの飛行を担うロケットなども組み合わせた状態で、「アリアン5」ロケットに搭載。今年10月5日以降に打ち上げられる予定になっている。

打ち上げ後、ベピコロンボはまず太陽を周回する軌道に入り、地球と並走するように飛ぶ。そして地球と金星、水星の重力を使って軌道を何度も変え、2025年に水星を周回する軌道に入る。そこでMPOとMMOは分離され、それぞれのミッションに挑む。運用予定期間は1年が予定されている。

  • 水星探査機「ベピコロンボ」の想像図

    水星探査機「ベピコロンボ」の想像図 (C) ESA

12月20日:ロシアの新しいISSモジュール「ナウーカ」の打ち上げ

地球の上空約400kmを回る国際宇宙ステーション(ISS)。1998年に建設が始まり、2011年7月をもって「完成」ということになっているが、実際にはその後も新しいモジュールや装置が追加されるなど、日々進化を続けている。

そして今年12月には、ロシアが開発した新しいモジュール「多目的実験モジュール」、愛称「ナウーカ」の打ち上げ、結合も計画されている。ナウーカとは「科学」という意味で、初の科学実験を目的としたロシア側モジュールとなる(従来のモジュールは電力や推力を供給する機械船、あるいは飛行士の居住区という側面が強かった)。

ナウーカは当初2007年に打ち上げが予定されていたが、開発の遅れ、試験中のトラブルなどが相次ぎ、延期が続いている。

無事に打ち上げ、結合されれば、ISS完成以来、その姿が最も大きく変わることになる。

なお、以前はISSの運用終了後、ナウーカなど比較的新しいロシア側モジュールを分離し、独立した宇宙ステーションとして運用するという話もあったが、現在のところその計画がどうなっているかは不明である。

  • 試験中の「ナウーカ」

    試験中の「ナウーカ」 (C) Roskosmos

12月:中国、月の裏側に着陸する探査機「嫦娥四号」を打ち上げ

近年、月探査にも力を入れている中国。2007年に初の探査機「嫦娥一号」ミッションに成功したのを皮切りに、2013年には「嫦娥三号」で、37年ぶりとなる探査機の月面着陸にも成功。大きな成果を残し続けている。

そして今年、その嫦娥三号のバックアップ機として開発されていた「嫦娥四号」が、改良と新しい観測機器をたずさえて打ち上げられることになっている。

目的地は、月の裏側の、南極付近にあるエイトケン盆地と呼ばれる場所。月の裏側はまだ探査機が着陸して探査したことがなく、成功すれば世界初となる。またエイトケン盆地は、過去に巨大な天体が衝突し、さらに月の内部が噴出した跡と考えられており、地質学的にも表側とは異なる、興味深い場所とされる。

また嫦娥四号の打ち上げに先立ち、今年6月ごろには通信を中継するリレー衛星の打ち上げも予定されている。

  • 嫦娥三号の探査車「玉兎号」

    嫦娥三号の探査車「玉兎号」 (C) CAS

2019年1月1日:探査機「ニュー・ホライゾンズ」、「2014 MU69」を探査機

2015年7月14日に、史上初の冥王星への接近観測に成功した探査機「ニュー・ホライゾンズ」(New Horizons)。人類が初めて目にする光景に、多くの人々が驚いた。

そのニュー・ホライゾンズは現在、次の目的地であるエッジワース・カイパーベルト天体(海王星の軌道より外側の、黄道面に広がる天体の総称)の「2014 MU69」に向かって、航行を続けている。

2014 MU69は2014年に宇宙望遠鏡「ハッブル」によって発見された天体で、太陽から約66億kmの距離の軌道を回っており、冥王星からは約16億kmほど離れたところにある。大きさは45kmほどで、2つの天体がくっついた形をしているか、もしくは2つの天体がお互いに回っている二重惑星である可能性が考えられている。

すでに2014 MU69に向けた軌道修正などは順調に行われており、現在のところ、最接近は日本時間2019年1月1日14時33分の予定となっている。

  • ニュー・ホライゾンズと2014 MU69の想像図 (C) NASA

    ニュー・ホライゾンズと2014 MU69の想像図 (C) NASA

(次回は1月24日に掲載します)

参考

Icesat-2
ESA Science & Technology: Missions to Mercury
Russian engineers tackle problems with MLM/Nauka module
China Eyes Unprecedented 40 Space Launches in 2018---Chinese Academy of Sciences
Spend Next New Year’s Eve with New Horizons | NASA

著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行なっている。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。

Webサイトhttp://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info