2018年に予定されている、注目のロケットの打ち上げや、衛星、探査機の活動を紹介する連載。

第1回では1月から4月までの予定について紹介した。第2回では5月から8月までに予定されている、新たな火星、太陽探査機の打ち上げや、日米の小惑星探査機の小惑星への到着、そして民間企業が開発した有人宇宙船の打ち上げなどについて紹介したい。

5月5日:NASAが火星探査機「インサイト」を打ち上げ

現在、6機もの火星探査機を運用しているNASAは、さらに今年、新たな火星探査機「インサイト」(InSight)を打ち上げる。

インサイトは打ち上げ後、約半年をかけ宇宙を航行し、今年11月に火星の赤道近くにある、エリシウム平原と呼ばれる平原に着陸。地中を掘って、火星の内部構造を探ることを目的としている。

当初は2016年3月の打ち上げが予定されていたが、搭載機機に不具合が見つかったことで、その次に地球から火星へ打ち上げができる今年へと延期されることになった。

またインサイトといっしょに、「マーズ・キューブ・ワン」(Mars Cube One)という2機の超小型探査機も打ち上げられる。6Uサイズのキューブサットで、インサイトが火星に着陸する間、リアルタイムのデータを地球に中継する役割を担う。

  • 火星探査機「インサイト」の想像図

    火星探査機「インサイト」の想像図 (C) NASA

6~7月:小惑星探査機「はやぶさ2」、小惑星「リュウグウ」に到着

2014年に打ち上げられた「はやぶさ2」が、往路の航海を終え、いよいよ目的地である小惑星「リュウグウ」に到着する。

「はやぶさ2」は、2010年6月に地球に帰還した「はやぶさ」の後継機で、「はやぶさ」が探査した「イトカワ」とは異なる、C型小惑星と呼ばれる種類の小惑星を探査し、鉱物や水、生命の起源などを探ることを目的としている。

「はやぶさ2」はリュウグウ到着後、1年半ほど滞在。その間にリュウグウの上空から探査するほか、地表に着陸し、砂や石などのサンプルを回収する。サンプル回収は早ければ今年12月にも実施されるとのこと。

そして2019年末ごろに出発し、2020年末ごろに、リュウグウのサンプルが入ったカプセルを地球に投下する予定となっている。

  • 小惑星リュウグウに接近する「はやぶさ2」の想像図

    小惑星リュウグウに接近する「はやぶさ2」の想像図 (C) JAXA/池下章裕

7月31日:NASAが太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」を打ち上げ

私たちを毎日照らす太陽。しかし、その正体はまだ多くの謎が秘められている。

その謎を突き止めるために、NASAとジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所が開発を進めているのが太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」(Parker Solar Probe)である。

パーカー・ソーラー・プローブは打ち上げ後、太陽表面から590万kmという距離にまで接近する。数字にするとかなり離れているようにも聞こえるが、じつは"太陽をかすめる"といったほうが適切なほどの近距離。その最接近時には機体が高温にさらされるため、分厚い耐熱シールドをはじめとする、強力な耐熱装備に覆われている。

探査機の質量は約700kgと比較的軽いものの、太陽に近づくには大きなエネルギーが必要なので、打ち上げには現時点で最強のロケットのひとつ「デルタIVヘヴィ」を使う。打ち上げ後、何度も金星の重力を使って軌道を変えるようにして飛行し、太陽に最接近するのは2024年の予定。

さらに太陽の重力に引き寄せられることで、このときの太陽に対する速さは秒速200km(時速72万km)にも達するという。これは人間がつくり出したものの中で史上最速となる。

  • 太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の想像図

    太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」の想像図 (C) NASA/JHU APL

7月以降:超小型ロケット「ヴェクターR」の初打ち上げ

ロケット・ラボと並んで、超小型ロケットを開発しているもうひとつの企業ヴェクター・スペース・システムズ(Vector Space Systems)もまた、今年、超小型衛星の打ち上げを計画している。

ヴェクターR(Vector-R)と呼ばれる同社のロケットは、エレクトロンより小型で地球低軌道に66kgの打ち上げ能力をもつ。

もっとも、同社はすでに2度の試験打ち上げを行っているものの、これは機体の構成や構造が実機とはまったく異なる試験機で、高度も宇宙にはまったく届いていない。そのため成功以前に、衛星を打ち上げられる実機を完成させ、打ち上げまでこぎつけられるかもまだ未知数である。

  • 昨年打ち上げられた、超小型ロケット「ヴェクターR」の試験機

    昨年打ち上げられた、超小型ロケット「ヴェクターR」の試験機 (C) Vector Space Systems

8月:NASAの小惑星探査機「オサイリス・レックス」、小惑星「ベンヌ」に到着

「はやぶさ2」と同じく、小惑星からのサンプル・リターンを目指すNASAの小惑星探査機「オサイリス・レックス」(OSIRIS-REx)もまた、今年、目的地の小惑星「ベンヌ」(Bennu)への到着を予定している。

オサイリス・レックスは2016年9月に打ち上げられ、昨年9月に地球の重力を使って軌道を変え、ベンヌへと向かう軌道に入っている。到着後、探査機はベンヌの上空から探査し、小惑星の特性を調べたり、サンプルを回収する場所を選んだりする。

そして2020年7月には、ベンヌに着陸しサンプルを採取。2021年にベンヌを出発し、2023年に地球にサンプルの入ったカプセルを送り届ける。

  • 小惑星ベンヌに近づく「オサイリス・レックス」の想像図

    小惑星ベンヌに近づく「オサイリス・レックス」の想像図 (C) Vector Space Systems

8月以降:ボーイングとスペースXの有人宇宙船、打ち上げ

2018年の宇宙開発で、おそらく最も大きな話題となるのは、米国の有人宇宙船がついに復活するということであろう。

米国はスペースシャトルの引退以来、宇宙飛行士の打ち上げをロシアの「ソユーズ」宇宙船に依存し続けてきた。その一方で、民間企業に宇宙飛行士の輸送を担わせる計画が立ち上げられ、大手のボーイングと、そしてスペースXの2社が参画。何年もの遅れを経て、ついに完成し、打ち上げが始まろうとしている。

まず登場するのはボーイングのCST-100「スターライナー」で、最新の計画では今年8月に無人飛行を行い、11月に宇宙飛行士が乗った有人飛行を行うという。一方のスペースXは「ドラゴン2」という宇宙船を開発しており、こちらも同じく8月に無人飛行を行い、そして12月に有人飛行を行うことになっている。

しかし、開発や安全面の審査が遅れているという情報もあり、有人飛行はもとより、無人飛行もさらに遅れる可能性も指摘されているなど、本当に今年中に米国の宇宙船が復活するかどうかは、まだ予断を許さない。

  • ボーイングが開発中の宇宙船CST-100「スターライナー」の想像図

    ボーイングが開発中の宇宙船CST-100「スターライナー」の想像図 (C) Boeing

  • スペースXが開発中の宇宙船「ドラゴン2」の想像図

    スペースXが開発中の宇宙船「ドラゴン2」の想像図 (C) SpaceX

(次回は1月22日に掲載します)

参考

Mission Overview | NASA
JAXA Hayabusa2 Project
Parker Solar Probe
OSIRIS-REx Mission Operations | NASA
NASA’s Commercial Crew Program Target Test Flight Dates - Commercial Crew Program

著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行なっている。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。

Webサイトhttp://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info