具体的には、45L(340mm×344.5mm×387mm)のABS樹脂製密閉ボックスに、毎秒4800億個のヒドロキシラジカルを発生させる帯電微粒子水発生装置を設置し、出力部位より垂直15cmの距離に試料(ウイルス液を染み込ませた1cm×2cmの滅菌ガーゼ)が入った滅菌ペトリ皿を置き、一定時間、帯電微粒子水に曝露したものを曝露群、帯電微粒子水発生装置の代わりに送風装置を設置して同様の実験が行われたものを対照群とし、比較検証が行われた。

その結果、曝露群では、対照群と比較してウイルス力価の有意な低下が確認されたという。また、不活化メカニズムの解明として、電子顕微鏡を用いて曝露群と対照群のウイルス粒子の歪度の計測を行ったところ、対照群と比較して曝露群では歪度が有意に増加していることが確認されたという。これは帯電微粒子水がウイルス粒子、特に表面の脂質膜であるエンベロープに損傷を与えていることを示唆しているという。

  • 帯電微粒子水がSARS-CoV-2に与える影響

    帯電微粒子水がSARS-CoV-2に与える影響 (出所:大阪公立大プレスリリースPDF)

さらに、定量的RT-PCRによるウイルスゲノムRNA量ならびにタンパク質泳動ゲルの染色やウェスタンブロッティングによるウイルスタンパク質量の評価が行なわれたところ、対照群と比較して曝露群では、ウイルスゲノムRNA量、タンパク質量のどちらでも有意な低下が確認されたという。これは、帯電微粒子水がウイルスタンパク質とウイルスゲノムRNAを傷害(変性や断片化)したことを示すものだという。

このほか、ウイルスの宿主細胞への感染性の評価が実施されたところ、曝露群では対照群と比較して宿主細胞に結合するウイルス量が有意に低下することが示されたという。

  • 帯電微粒子水がSARS-CoV-2の感染能力に与える影響

    帯電微粒子水がSARS-CoV-2の感染能力に与える影響 (出所:大阪公立大プレスリリースPDF)

これらの結果から、帯電微粒子水に曝露されたウイルスは、エンベロープ、タンパク質、そしてゲノムRNAが傷害を受けることにより宿主細胞への結合能力が損なわれ感染性を失う、すなわち不活化されることが明らかとなったと研究チームでは説明しており、今後、活性酸素の関与を含めた作用機序のさらなる解明とともに、空間浮遊SARS-CoV-2に対する帯電微粒子水の不活化効果の検証を進めていきたいとしている。