国立天文台アルマ望遠鏡プロジェクトは9月13日、天の川銀河中心の観測の結果、この領域の星がランダムに動いているのではなく、いくつかのグループに分類できることが判明したことを明らかにした。

同成果は、JAXA 宇宙科学研究所の坪井昌人教授らの研究チームによるもの。詳細は、9月13日からオンラインで始まった日本天文学会2021年秋季年会において、15日にて発表される予定だという。

高い観測能力を持つアルマ望遠鏡を活用することで、星雲中に深く埋もれた星であっても観測できると期待されていた。そこで坪井教授らは2017年、周波数230GHzで天の川銀河中心の観測を実施。25ミリ秒角の解像度と、いて座A*の電波強度の5万分の1まで検出できる高い感度を実現し、天の川銀河中心の周囲の50個ほどの星を電波で検出することに成功していた。これらのほとんどは極めて明るいウォルフ・ライエ星やO型星であったという。

また、2019年の観測では、電波望遠鏡として初めて、天の川銀河中心の星々の運動の測定にも成功。これらの成果から、同領域の星たちがランダムに動いているのではなく、いくつかのグループに分類できることが判明したという。

具体的には、多くの星は大質量ブラックホールを中心にして時計回りに公転していると見られるという。この公転そのものは、赤外線観測による長年の観測から、すでに分かっていることだが、今回の2回のアルマ望遠鏡でも確認することができたとした。

もしこの領域で星の形成が散発的に起きるとすれば、星の運動はランダムになってもいいはずだという。そのため星の運動がそろっているという観測結果からは、「ブラックホールに向かって落下してきたガスから同時に星が作られた」もしくは、「星自身がそろってブラックホールに向かって落下している」というこの2つの可能性が考えられるとしている。

また、星の運動速度は外側では毎秒数十kmとゆるやかだが、内側に行くにつれて激しくなり、毎秒数百kmにも達するという。これは、恒星がいて座Aの周囲を惑星のようにケプラー運動していると考えると説明がつくとするほか、この速度から、ブラックホールの質量を推定すると、太陽の約400万倍となり、これまでほかの観測結果から推定されてきた、いて座Aの質量と一致する結果となったともしている。

さらに、天の川銀河中心に最も近い場所に位置する星団「IRS13E」における星の動きも測定することにも成功しており、その結果から、星団のほとんどの星は西向きに運動していることが判明したとのことで、これも赤外線による従来の観測結果を裏付ける結果だとしている。このほか、星団中心に星ではなく明るい円盤状の天体が存在することも明らかになったとしている。

  • アルマ望遠鏡

    アルマ望遠鏡で観測された天の川銀河の中心部の様子。(左)アルマ望遠鏡で観測した星の位置と動きが矢印で表されている。中心にはいて座A*が存在する。(右)左の画像で楕円枠内の右下にあるIRS13E星団のクローズアップ (C)M. Tsuboi et al. (出所:アルマ望遠鏡Webサイト)