経済産業省(経産省)傘下の新エネルギー・産業技術総合機構(NEDO)は2020年12月28日、「太陽光発電開発戦略2020(NEDO PV Challenge2020)」を策定し、公開した。

この「太陽光発電開発戦略2020」は、政府が作成した2050年までに“カーボンゼロ”の脱炭素社会を実現する具体的な各施策を支えるために、その1つとして太陽光発電の大量導入社会を実現する技術戦略として新たに策定したもの。

日本で2050年までに太陽光発電の大量導入社会を実現する技術・事業戦略として、高付加価値化事業の創出やその立地条件と系統制約の顕在化、安全性向上などによる循環型社会(特に信頼性とリサイクルなどで)の構築に向けて、発電コストの低減への課題を提示し、2050年までに太陽光発電の大量導入を実現する新分野を特定し、その技術開発戦略を提言したもの。

日本では経産省とNEDOの先導によって、2012年から太陽光発電の固定価格買取制度(FIT)を策定したことによって、日本国内では太陽光発電事業が加速し、その後も太陽光発電モジュールの低価格化が進み、かつ価格競争力を持つ海外企業の参入などによるシュア拡大によって、国内での太陽光発電事業は拡大した。

今回の太陽光発電開発戦略2020の策定では、現状での太陽光発電事業での技術課題に加えて、2050年の循環型社会の実現に向けた新しい技術課題の設定を加え、かつ太陽光発電価格を再評価し、「“発電コストの低減”と同時に太陽光発電の大量導入社会実現に向けた課題を包括的に検討している」と解説する。

その上で、日本(企業など)の太陽光発電産業の強みを踏まえて、日本での新産業・市場創出の視点を盛り込んだと、その狙いを語る。

この太陽光発電開発戦略2020が伝えるポイントは、高付加価値事業の創出を訴え、立地制約と系統制約の取り組みの方向性を伝えている。まず、高付加価値事業の創出のためには、導入形態を多様化し新分野の開発として「建物の側面、重量制約のある屋根、車などの移動体」向けなど多様な太陽光発電モジュール開発とその事業化を提言し、太陽光発電する領域を拡大する事業を提言している。同時に、車などの移動体に太陽光発電モジュールを搭載することによって、電気自動車の航続距離の増大や充電回数の低減などの新しい価値創造も重要と示唆している。さらに、太陽光発電が変動電源である点を考慮した主要電源への影響緩和(需給の調整)への取り組みの重要性を示唆している。

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    「太陽光発電開発戦略2020」(NEDO PV Challenge2020)に紹介されている、車などの移動体に太陽光発電モジュールを搭載した事例 (出典:NEDO)

最近の豪雨や大型台風による太陽光発電装備への破損や火災発生を防ぐ、安全性強化の技術開発の重要性を訴え、太陽光発電事業の長期安定性電源化は循環型社会システム構築の基盤となるとも示唆している。

導入形態を多様化と新分野の開発では、市場ごとに太陽電池モジュール・システムの最適化の技術開発と事業戦略を立てることが不可欠と指摘している。

NEDOのWebサイトには、太陽光発電開発戦略2020の全文が公開されている。詳細な各分野での技術分析と事業戦略などは解説されている。