アクセルスペースは11月26日、完成した地球観測衛星「GRUS」4機を報道陣に公開した。同社は現在、新たな中核事業として、地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」を構築中。この4機が加わることで、軌道上のGRUS衛星は5機体制となり、AxelGlobeの能力は大幅に向上、サービスが本格的に開始できるようになる。

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    地球観測衛星「GRUS」。4機とも同型の衛星で、スペックは同じだ

AxelGlobeは中分解能で世界に挑む

GRUSは、サイズは約60cm×60cm×80cm、重さは約100kgの超小型衛星。対角線上に2つの望遠鏡が並んでおり、2.5mの地上分解能で、幅57km以上の画像を撮影することができる。

大型の商用観測衛星では、すでに数10cmレベルの地上分解能を実現。大きな望遠鏡を搭載できない超小型衛星だと、とても地上分解能では勝負にならないが、コストが桁違いに安いため、たくさん打ち上げることが可能だ。軌道上に多くの衛星があれば、時間分解能(撮影頻度)を上げることができる。これが、超小型衛星の大きなメリットだ。

AxelGlobeの初号機「GRUS-1A」は、2018年12月に打ち上げられた。これまで運用は順調で、2019年5月よりサービスを開始。GRUSの撮影画像について、同社の中村友哉代表取締役CEOは、「羽田空港の滑走路の数字が読める。ここまで細かく見えると、都市部でも十分活用できる」とアピールする。

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    GRUS-1Aが撮影した画像。飛行機の形までよく見えている

今回追加されるのは、「GRUS-1B」「同1C」「同1D」「同1E」の4機。ソユーズロケットに搭載され、バイコヌール宇宙基地から、2021年3月20日に打ち上げられる予定だ。4機は、初号機と同じ高度600kmの太陽同期軌道に投入。装備した推進系を使って位相をずらし、ほぼ等間隔になるよう配置される。

全機とも名称がGRUS-1であることから分かるように、新造の4機は基本的に初号機と同スペック。通信速度の向上などはあるものの、衛星の外観から違いはほぼ分からない。なお、複数の同型機が一度に打ち上げられるのは、日本の衛星では初めてだという。

軌道上の衛星が1機から5機になることで、観測頻度が大幅に向上する。従来は「2週間に1回」だったのに対し、これからは「2日に1回」となる。中村CEOも、「2週間に1回だと、どうしても単発利用になることが多いが、2日に1回になると高頻度のモニタリングが可能になるので、本格的に利用が進むフェーズになる」と見る。

衛星5機によるサービスは、打ち上げから3カ月以内に開始する予定。AxelGlobeのサービスがいよいよ本格的にスタートすることになり、中村CEOは年間の売り上げについて、「3年以内に3桁億円にしたい」と意気込む。

今後、衛星の数をさらに増やしていき、2023年には10機体制の構築を目指す。中村CEOは、「今の時点では最低10機は必要だと思っている。10機あれば、世界中のどこでも1日1回は撮ることができる」とコメント。「ニーズが増えて10機ではカバーできなくなってきたら、数を増やしていきたい」と見通しを述べた。

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    2台の望遠鏡を使うことで、より広い範囲の観測が可能になる

近年、宇宙利用の分野では、多数の同型衛星を配置する方法(コンステレーション)が注目されている。AxelGlobeもその1つだが、同社の大きな特徴は、地上分解能が2.5mと、中程度であることだ。普通に考えれば、分解能は高ければ高いほど良さそうに思える。あえて中分解能を選んだのはなぜか。

これについて、中村CEOは5年前の会見で、「高分解能はコストが高く、競合も多い。逆に低分解能だと、用途が限られるし、無料の画像も出ている。中分解能が一番いい」と述べていた。その後、民間による衛星コンステレーションはさらに活発化しているが、現在の状況については、「今でも認識は変わっていない」という。

「中分解能のプレイヤーはまだ少ない。しかしニーズが小さいわけではなく、いかにソリューションを提供できるか、いかにリーズナブルな価格を提示できるか、という点がビジネスの上で重要になる」という認識を示し、「衛星の製造コストは他社と比べてもアドバンテージがある。プレイヤーが少ないうちに、どんどんニーズを開拓したい」とした。