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千葉工業大学(千葉工大)は12月9日、千葉県夷隅郡御宿町の網代湾上から3回目となる小型ロケットの洋上発射実験を実施し、全5機の打ち上げに成功したことを発表した。

  • 洋上打ち上げ

    洋上フロートから打ち上げられる、千葉工大の工学部機械電子創成工学科が設計製作した「2020-B3」ロケット (出所:千葉工大プレスリリースPDF)

今回の小型ロケット洋上発射実験は、同大学が進める「宇宙微粒子採取ロケットプロジェクト」のための基礎研究として行われているものだ。同プロジェクトでは、“宇宙の入口”とされる高度100kmを目指しており、1回目の洋上発射実験は2019年3月に実施された。洋上ならではの揺れがロケットの発射に影響に与える影響について詳細な調査が行われている。

今回は、これまで2回の結果を踏まえ、より効率的にロケットを打ち上げられるよう改良が施されたうえで実験が行われた。主な改良点は、洋上フロート上において最大3機のロケットを同時に発射できるようにした点だ。今回は、揺れる洋上で安全かつ確実にロケットを発射用レールに取り付ける技術と、パラレルで打ち上げ実験が実施可能な打ち上げ支援設備の構築が目指された。

これらの改良により、2020年11月14日と15日の2日間で5機の打ち上げ実験に成功。特に2日目の15日は、12時半からの1時間半という短時間に3機のロケットの連続打ち上げを成功させ、大きな成果となったとしている。ちなみに今回打ち上げられたロケットは、以下の5機だ。

2020-B3:全長1577m・打ち上げ時重量7610g

千葉工大工学部機械電子創成工学科3年生らが機械電子創成発展実験・実習の一環で設計製作

PEC5:全長1608mm・打ち上げ時重量6850g

千葉工大が主催するロケットガール&ボーイ養成講座に参加する関東近郊の高校生Aチームが設計製作

UniCorn:全長1498mm・打ち上げ時重量7032g

ロケットガール&ボーイ養成講座に参加する高校生Bチームが設計製作

sky_sea_land:全長1709mm・打ち上げ時重量6955g

ロケットガール&ボーイ養成講座に参加する高校生Cチームが設計製作

SPARK-λ:全長1901mm・打ち上げ時重量4940g

千葉工大のロケットサークル団体「SPARK」所属の学生が設計製作

  • 洋上打ち上げ

    今回打ち上げられたロケットの1機。千葉工大のロケットサークル団体「SPARK」所属の学生が設計製作した「SPARK-λ」 (出所:千葉工大プレスリリースPDF)

なお、5機とも安全を考慮して推進剤には火薬などは使用されていない。液体の酸化剤と固体の燃料を組み合わせたハイブリッド方式を採用している。最高到達点は数100mに達する。

今回の実験の成功により、洋上発射実験において短時間に複数の小型ロケット発射する技術が蓄積されたという。次年度以降に開催が計画されている「ロボトライアスロン」の実現に向けた大きな成果となったとしている。

なおロボトライアスロン(正式名称「御宿ロボトライアスロンコンペティション」)は、小型ロケットを利用した宇宙技術・ロボット技術を競う新しいコンペティションだ。主に、大学生や高校生などの教育を目的として開催される。

内容は、小型ロボットを搭載した小型ロケットを洋上から打ち上げ、高度250mに到達したらパラシュートを展開して小型ロボットを放出。小型ロボットは着水したあとは遊泳し、砂浜に上陸してゴールへ向けて走破するという内容で、難易度の高いコンペティションとなっている。なお、小型ロボットはヒト型である必要はないようだ。

  • 洋上打ち上げ

    御宿ロボトライアスロンコンペティションの競技内容の概要図 (出所:千葉工大プレスリリースPDF)

同競技の会場は、今回の洋上実験の舞台でもある御宿町の海と砂浜となる。ロケットを海に向けて打ち上げられ、近くに広い砂浜を有する御宿町の網代湾特有の地形だからこそ実現できる競技だという。ほかにはない御宿町ならではの新たなイベントとして定着を図り、若者の交流人口の増加も期待できるため地域活性化も目的とされている。全国の大学生や高校生の参加を受け付け、準備が整い次第、2021年度以降に実施される計画だ。