「新興ベンチャー「アストロオーシャン」が目指す新たな宇宙ビジネス(前編)」はコチラ

さる3月2日に千葉・御宿海岸で行われ成功した、千葉葉工大の小型ロケット洋上打ち上げ実験。ここでは洋上の打ち上げプラットフォームに乗船しての写真レポートをお送りしたい。

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    打ち上げに使用された洋上プラットホームは10mx8m。海のプロたちからすればごくごく小規模な設備で、彼らは「ポンツーン(浮き桟橋)」と呼んでいた (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    プラスチック製の浮力体に、鉄パイプやクランプ(固定金具)という建設現場の仮設足場部材を使って組み上げたものだ (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    機体とペイロードの最終準備作業は漁港の岸壁で。「ASTROCEAN」と背中に刺繍の入った揃いのつなぎを着用 (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    洋上プラットフォームに機体とクルーが乗り込む。海に落ちない、落とさないよう細心の注意で作業を行う (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    漁船に曳航され、事前に設定した打ち上げ地点(洋上)を目指す (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    既設のアンカーに結わえられているロープを拾い上げ、プラットホームを固定する作業。陸上では穏やかと思えた天候だったが、海に出ると潮流に流され作業は難航 (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    プラットフォーム中央に建てられた発射設備。周囲の作業スペースも必要十分に確保できた (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    ハイブリッドロケットの酸化剤は亜酸化窒素(N2O)。ボンベをプラットフォーム上に固定し供給設備とする (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    ガイドレールの中央にロケットを据え付け、酸化剤のパイプを接続 (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    据え付けられたロケットの点火機構をスタンバイ (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    ここでクルーは機体回収班と点火班の2チームに分かれ、漁船に移乗 (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    洋上での乗り移りを安全に行うため、漁船を接舷させ「もやい」で固定 (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    乗り移りを安全かつスムーズに行えるよう、鉄パイプ製の手すりの一部を取り外せるようにしている (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    洋上プラットフォームには防舷材(緩衝材)を2つ装備。作業フロー上、洋上での乗り移りが発生するため、確実に漁船を接舷させ、安全かつスムーズに移乗が行えるように工夫した (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    点火班の漁船で沖側から見た洋上プラットフォーム。風向の目安となる吹き流しなどを目安に、風下に入らぬよう、電波の届くギリギリの距離で漁船の位置を維持しようとするが、潮流もありかなり難しい (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    発射カウントダウンに入る点火班 (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    洋上プラットフォームの風下側で、回収班の漁船がじゅうぶんに距離をとって待機 (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

Astrocean-nano01.mov(動画) 静止画と現場の音声で構成した、飛翔のもようを伝える動画ファイル。

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    残念ながら開傘はせず。エンジンは海中で没したが、ノーズコーンは回収できた (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    砂浜へ自力で戻るはずのペイロード、間違って回収されかかる (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    打ち上げやプラットフォームをドローンを操作して記録撮影する、アストロオーシャンの森CEO (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

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    岸壁や洋上での作業をエネルギッシュに率いた御宿和田浜漁業協同組合の畑中英男 組合長(76、左)の健康法は、朝食前のヨーグルト・散歩・ラジオ体操。千葉工大の和田豊准教授は海岸に設置された本部から全体を指揮した (喜多充成撮影、千葉工大・アストロオーシャン提供)

打ち上げ後の記者説明会で千葉工大の和田准教授は、「当初我々が計画していたものよりサイズが大きくなり、床部分も2段式の厚みのあるものとなりましたが、洋上での作業は問題なく行えました」とコメント。

さらに「地元・御宿和田浜の漁業共同組合の全面的な協力と、洋上設備の構築・運用のプロフェッショナルでもあるアストロオーシャンからの適切なアドバイスで、落水やツール落下ゼロで作業を終えることができた」と謝辞を述べた。

いっぽうアストロオーシャンの森琢磨氏は、「アドバイスできたのは、海上作業の基本的な心得の部分にすぎません」と謙遜しつつ、「ほんとうにノウハウを発揮できるのは、もっと大きなプラットフォームでの作業です。今後はさらに規模の大きな洋上打ち上げに関わり、将来の小型ロケット打ち上げにつなげていきたい。その第一歩の試みとして、事故なく成功裏に終了したことを喜びたい」と語った。

また、取材を終えての率直な感想として、不規則に揺れる洋上プラットフォームの上で、陸で行っているのと同じ効率や注意力を維持して作業を遂行するのはきわめて難しい。筆者自身、撮影以外の大部分の時間はプラットフォームの隅のほうで横たわり、必要なときだけ起き出したり、ドローンが上空を通過するときはカメラ構えてローアングルで撮っているフリをしたりして、船酔いをしのいだ。そういう過酷な環境での作業には、和田氏が言うように慣れたプロの助言は不可欠だろう。千葉工大とアストロオーシャンが共同研究の枠組みで行う洋上打ち上げは、今後さらにスケールアップをめざそうとしている。さらに洋上での揺れが小さくなることも期待できるので、引き続きフォローしていきたい。

著者プロフィール

喜多充成(きた・みつなり)
週刊誌のニュースから子ども向けの科学系Webサイトまで幅広く手がける科学技術ライター。
産業技術や先端技術・宇宙開発についての知識をバックグラウンドとし、難解なテーマを面白く解きほぐして伝えることに情熱を燃やす。
また、宇宙航空研究開発機構機関誌「JAXA's」編集委員も務める(2009-2014)。

共著書に『私たちの「はやぶさ」その時管制室で、彼らは何を思い、どう動いたか』(毎日新聞社)ほか。