新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、2020年の半導体市場の勢いは鈍化し、世界的な景気後退の脅威が迫ってはいると危惧される一方で、医療業界からの半導体需要が急増している。そうした現状を踏まえ、ハイテク産業市場動向調査会社の英Omdiaは4月23日付で、これまでの2020年の半導体市場予測を下方修正したことを明らかにした。

具体的には2020年の半導体メモリを除いた半導体市場を前年比5%減へと下方修正した。これにより半導体メモリを含めた半導体市場は、前年比2.5%増の4393億ドルになるとしている。同社はこれまで2020年は同5.5%増との予測をしていたため、3ポイント下方修正させたことになる。

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    半導体メモリを除いた半導体市場の前年比増減率(%)予測 (出所:Omdia)

Omdiaの半導体バリューチェーンのリサーチアナリストであるMyson Robles-Bruce氏は「世界経済における新型コロナウイルスの影響がより明確になってきたため、半導体市場の予測を下方修正した。日本はすでに不況に入っており、米国と欧州も第2四半期に不況に入ると多くの経済学者が予想しているため、すべての地域・国およびほとんどすべてのカテゴリー別市場で需要は弱含むと見ている」と述べている。

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    今後5年間の半導体市場予測 (出所:Omdia)

セグメント別では医療向けが急成長

製品セグメント別にみるとモバイル関連が、2020年の弱含みの主な要因の1つになるという。モバイル機器の市場規模は前年比で4.7%減となる見込みで、この減速を受けてモバイル向け半導体市場も当初の同4.8%増から同2.0%増へと引き下げている。

また自動車分野も、新車生産台数が同12.4%減との予測となっており、車載半導体市場も同7.5%減に落ち込むと同社は予測を下方修整している。

一方、産業用半導体市場は同2.5%増とプラス成長が見込まれている。特に医療分野向け半導体需要は同5.9%増と伸びることが期待されるという。特に顕著なのは人工呼吸器で、その出荷台数は前年比60%増と急増することが予想されており、金額面でも同71%増の46億ドルに達することが期待されるとしており、すべての医療機器を含めた市場規模も58億ドルと全体の約11%を占めるまでに成長するとしている(2019年は8.1%)。

医療用人工呼吸器の半導体売上高は、COVID-19パンデミックによって2020年に短期的に押し上げられた。 Omdiaは、2020年のベンチレータチップ売上高の予測を2倍に増やし、2021年まで成長が続くと予測している。

なお、Omdiaの産業用半導体シニアアナリストのPaul Pickering氏は「医療用人工呼吸器は70年以上使用されてきたが、その間、単純な電気機械設計から、複数のマイクロコントローラー、ブラシレスDCモーターコントローラー、タッチスクリーンインタフェース、USBやワイヤレス接続を備えた複雑な電子制御システムへと進化してきた。その結果、2020年の新型コロナウイルスの課題に対応するために出荷が増加するにつれて、これらの医療装置は半導体の消費を増加させている」と述べている。

医療用半導体セグメントは、高齢化、遠隔診療の浸透、ポータブルおよびウェアラブルデバイスへの移行、および人工知能(AI)の台頭など長期的トレンドに載って、2021年以降も産業用半導体市場全体よりも急速に成長し続けるとOmdiaは予測している。