STMicroelectronicsの日本法人であるSTマイクロエレクトロニクスは9月19日、都内で同社が2007年より展開するArm Cortex-Mベースの32ビットマイコン「STM32シリーズ」に関する説明会を開催。現在の概況などについての説明を行った。

STM32は2007年のローンチ以降、毎年何らかの新製品を提供してきた。2019年にはマイコンではなくSTM32シリーズとして初となるMPU「STM32 MP1シリーズ」も提供を開始するなど、適用範囲の拡大を常に目指す取り組みを続けてきており、その結果、汎用マイコン市場(車載除く)で2007年11位であった順位が2018年には2位にまで上がってきたという。

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    STM32ポートフォリオ。2007年から毎年新製品が提供され続けてきた

そんな同社のSTM32が現在、もっとも注力しているのがインダストリアルだという。単にインダストリアルといっても、産業用ロボットやオートメーションといったほか、健康・医療、イメージング、POSなど幅広い分野に分かれるが、往々にして共通するのが「より高い演算性能」、「より高度なAI処理」、「コネクテビティの多様化」、「セキュリティの強化」だという。

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    インダストリアル分野で起こっている4つのトレンド

例えば演算性能の向上としては、ヘテロジニアスなデュアルコア化があげられる。「例えば、1つのコアがモータ制御を実施し、リアルタイムにデータを取得する一方、もう1つのコアがコネクティビティを活用してインターネットに接続してクラウドとデータをやり取りする、といったことが行われている」とSTMicroelectronicsのマイクロコントローラ & デジタルICグループ マイクロコントローラ製品事業部 グローバル・マーケティング・ディレクターのダニエル・コロナ氏は説明する。

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    説明を行ったSTMicroのダニエル・コロナ氏

また、AIへの対応として、2019年1月に製品開発者向けのSTM32Cubeエコシステムとして、「STM32Cube.AI」を発表している。エンジニアは、これを使うことで、開発したコードを圧縮、軽量化してSTM32に搭載して推論処理を行うことが可能になるという。これにより、主に「モーション分析」、「音声認識」、「物体検出」といった推論処理をSTM32上で行うことが可能になったとするほか、現在、STM32 AIパートナープログラムとして、パートナ企業による機械学習およびディープラーニング開発サービスの提供なども進めているという。

コネクティビティとセキュリティは関連する内容となるが、STM32では、製品ごととはなるが、Bluetooth Low Energy、Wi-Fi、Zig-Bee、LoRA、Sigfox、4G/LTEなど、さまざまな通信距離、通信速度、通信周波数のニーズに対応することが可能となっているとする。またセキュリティとしてもソフトウェアによる対応のほか、ArmのTrustZoneと独自のセキュリティ機能を組み合わせたSTM32 L5を2019年中に提供する予定とするなど、ハードウェアとしての機能強化を図っており、こうした技術を背景としたセキュリティエコシステム作りを「STM32 Trust」と銘打って現在進めているとする。「セキュリティにおついては、IoTの進化に併せて認証が厳しくなっていくと思っている。IoTの市場は、まだそこまでセキュリティにコストをかけない企業と、専門のセキュリティチームを抱えて開発を行う企業に分かれているが、今後2~3年で、セキュリティに関する規制強化という話が出てくると思っている。そのときに、各企業がどういう対応をとるのか。STとしても、そうした動きに対応できる準備を着々とすすめ、ユーザー企業のニーズに対応していく」(同)とする。

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    シリーズによって異なるが、STM32全体として幅広い通信ニーズに対応することが可能

こうして見ると、IoT、そしてIIoTの普及と併せて進化が図られているSTM32という流れが見えてくるが、2019年は、そうした動きをさらに加速させる取り組みとして、2018年に買収したGUIツールベンダの「Draupner Graphics」が有するプログラミング不要でGUIを構築できるソリューション「TouchGFX」(完全に不要というわけではなく、必要な場合はC言語で記述することも可能)をSTM32に統合した。

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  • TouchGFXの概要。描画画像サイズは、内蔵のハードウェアアクセラレータが対応できるサイズで、これ以上のサイズについてもソフトウェア処理として描画が可能

これは、あらかじめ用意しておいた画像データを読み出すことで、スイッチのオン/オフやスライダーといった機能をタッチインタフェース上で手軽に開発できるようにするもの。産業機器分野でも若手を中心にタッチパネルの活用ニーズが高まっており、そうした分野でのSTM32のさらなる活用を見込んだ取り組みとなっている。

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  • TouchGFXの実際のデモの様子。プログラムを知らなくてもGUIを構築することができるのが特徴。これを活用することで、産業機器のGUIをより洗練されたものに作り変えることが容易に行えるようになる

なお、同社はSTM32マイコンの今後の方向性として、引き続き、ワイヤレス、セキュリティ、エッジAIというニーズに対応を図っていくこと、ならびに演算処理の機能強化などを目的とした搭載メモリ容量の増加なども行っていくことを考えているとするほか、エコシステムの強化として、教育支援やコミュニティの強化なども図っていくとしている。同氏も、「ユーザーフレンドリが重要と考えている。さまざまな通信規格への対応や、セキュリティ強化もその一環で、最低10年間の長期供給保証もインダストリアル分野のユーザーのための対応であり、我々は今後も長期にわたるビジネス継続をコミットしていく」としており、さまざまな角度の取り組みを進めていくことで、STM32ユーザーの増加を目指していくとした。

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    STM32ファミリの今後の展望