バイオベンチャー企業群であるちとせグループは、三菱商事とサラワク生物多様性センター(Sarawak Biodiversity Centre : SBC)が共同でマレーシアサラワク州に設立した熱帯環境下における藻類培養設備(1,000m2)の設計・監修を行ったと発表した。

同設備は、2019年8月27日に開催する三菱商事とSBC共催の開所式にて公開する予定だ。

  • ちとせグループが発表した藻類培養設備

    ちとせグループが発表した藻類培養設備

「3次元型」で藻類培養の効率化・設備の大規模化を実現

三菱商事とSBCは、2012年10月より現地の有用な藻類の収集&実用化を目指したプロジェクトを開始しており、ちとせグループは、同プロジェクトにおける三菱商事の技術アドバイザーとして、2013年より現場におけるプロジェクト運営やSBC 研究員への技術指導を行ってきた。

同プロジェクトの責任者である星野孝仁氏(ちとせグループ 藻類活用本部・本部長)によると、今回ちとせグループが設計・監修を行った藻類培養設備は、「熱帯環境下での効率的な藻類の培養と大規模化を実現するものである」という。

  • ちとせグループ

    ちとせグループ 藻類活用本部・本部長の星野孝仁氏 (画像は2019年1月取材時のもの)。メール取材にてご回答をいただいた

具体的には、培養設備を食品のパッキング用に用いるような汎用的なバッグを用いた「3次元型」にすることによって、従来の「2次元型」(いわゆる“池のような形をとった培養設備”)よりも効率的に光を摂取できるようにした。さらには、そうしたバックにはリサイクル可能なものを使用することによって、清掃・在庫管理などのコストの削減に成功した。

なおこの設備自体は2018年末に竣工しており、今回の発表に至るまで継続的な培養試験を行ってきていたといい、すでに同設備で培養した藻類をエビ養殖・孵化場へ提供し、飼料や水質調整剤として活用する取り組みも開始している。

星野氏は今回の発表に関して「生産から、加工、商品開発、建設・機械等、さまざまな領域で協業できるパートナーが集まっている。現在は10ha以上の商業生産から初めて、いくつかの用途における商業化の検討を潜在的なパートナーと実施している段階。今後はあらゆる用途分野での商業化を図っていく予定だ」とコメントした。

藻は世の中においてこれまで、さまざまな領域で商業化されてきている。機能性食品、栄養補助、飼料、肥料、水質改善、バイオ燃料――。星野氏自身も、今後は化成品分野などにおける藻類の活用・商業化の可能性があると見ているそうだ。

今回の培養設備はそうした、藻類を活用した事業の新たな可能性を形にするための「研究用途」としての利用を想定したもの。同設備を起点にした新たな取り組みが実を結べば、さらなる大型設備の作成、ひいては藻類産業のさらなる拡大へとつながりそうだ。

ちとせグループ
ちとせ研究所を中核とするバイオベンチャー企業群。農業・医療・食品・エネルギー・化学などの幅広い領域で事業を展開している。グループ子会社にタベルモティエラポニカ、植物ルネサンスなど。