米オークリッジ国立研究所(ORNL)の研究チームは、レドックスフロー電池向けに、低コストで高性能なナトリウムイオン交換膜を開発したと発表した。非水系電解液と組み合わせて用いることによって、高エネルギー密度のレドックスフロー電池を実現できるとしている。研究論文は「ACS Energy Letters」に掲載された

  • レドックスフロー電池向けナトリウムイオン交換膜

    今回開発されたレドックスフロー電池向けナトリウムイオン交換膜 (出所:ORNL)

レドックスフロー電池の基本的仕組みは、正極側と負極側で種類の異なる電解液をポンプ循環させるというもので、電池の充放電は電解液の酸化還元反応時のイオンの出し入れを利用して行なう。正極側と負極側の電解液はセパレータで分離される。このセパレータは特定のイオンを透過させるイオン交換膜の機能をもっており、電解液間でのイオンの移動を利用して液中での電気的バランスを保つ。

レドックスフロー電池は、丈夫で長期間運転可能であり、大容量化がし易く、応答速度も速いといった特徴がある。このため電力網における需要変動への対応や、太陽光発電・風力発電などがもっている出力変動の吸収、停電時の非常電源など、さまざまな用途に利用できる電力網向け定置型二次電池としての実用化が検討されている。

これまで試験されてきたレドックスフロー電池の多くでは、水系電解液が使用されているが、水系電解液の問題点としてエネルギー密度が低いことがあるので、エネルギー密度を高くできる非水系電解液を使用したシステムの研究が進められている。

非水系レドックスフロー電池を開発する上で課題となっているのが、セパレータとしてのイオン交換膜の性能である。イオン交換膜には、伝導度の高さ、電気化学的安定性、物理的堅牢性の両立が求められる。

今回の研究では、ナトリウム金属を用いた非水系レドックスフロー電池向けのイオン交換膜の開発を行なった。典型的な水系レッドクフロー電池に比べてエネルギー密度を2倍から3倍に高めることができるようになるという。

イオン交換膜の材料としては、低コストで利用できるポリエチレンオキシド(PEO)を使った。可塑剤としてテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)を添加することによって、膜の伝導度は約100倍にも高まったと説明されている。

ただし、これらの材料の組み合わせには、膜の機械強度を低下させるという効果もある。研究チームは、PEOにカルボキシメチルセルロース(CMC)を添加することによって、この副作用を相殺したとする。論文では、ナトリウム重量あたり5%のCMC添加によって、膜の伝導度やナトリウム金属に対する電気化学的安定性を損なわずに、膜の機械強度が向上すると説明されている。

CMCは食品産業では増粘剤として利用されている低コストで安全性の高い材料である。PEO、TEGDME、CMCという3つの材料を組み合わせた高性能なナトリウムイオン交換膜によって、高エネルギー密度のレドックスフロー電池が実現できると期待されている。