リンクスは6月6日、プリント基板設計・製造会社であるアイティエスエンジニアリング(ITSE)を2018年4月25日付で子会社化。6月25日付で同社の社名を「リンクスアーツ」へと変更し、エンベデッドビジョン事業に本格的な参入をすることを発表した。

  • リンクスアーツのロゴ

    ITSEをリンクスアーツへと名称変更し、エンベデッドビジョン市場に参入する

これまでのリンクスは、工場などでのコンピュータビジョン(マシンビジョン)を中心とした技術商社ビジネスを展開してきたが、近年、カメラを用いた物体認識技術の進歩は加速度的に進んでおり、併せてその適用範囲も急速に拡大しつつある。一方で、そうした急激な市場の拡大は、それをビジネスに活用しようとするカスタマに、本来の差別化要因となるそうしたビジョンシステムの上で動作するアプリケーションの開発に注力させるのではなく、ハードウェアおよびソフトウェア技術のキャッチアップを要求することとなり、やりたいこととやるべきことの歪みを生じさせる要因にもなっていた。

  • コンピュータビジョン活用のために必要となる要素技術各種
  • コンピュータビジョンを活用するユーザーや領域の変化
  • 2018年現在におけるコンピュータビジョンを活用するために必要な要素技術イメージと、実際にそれを活用するユーザ層のイメージ

「コンピュータビジョンをさまざまな分野で活用するための要素技術としては、CPUやFPGA、メモリ、イメージセンサ、MIPIのような各種高速インタフェース、ディープラーニングと複数存在し、それぞれがめまぐるしく進化していく中、エンジニアはそれらを習得していく必要があった。リンクスは、これまで画像技術を国内に持ち込むビジネスを行なってきており、技術のすごさを説明するために、そうした画像処理の技術的ノウハウを蓄積してきた経緯がある。その一方で、それら要素技術を組み合わせてシステムインテグレーションを行なうリソースは不足気味であったこともあり、今回、ITSEの買収による拡充を決定した」と同社では参入の背景を説明。具体的には、カスタマごとにマッチした「正しい先端技術を正しく組み合わせて提供していく」という方向性を示しており、カスタマが開発の最初期、仕様の策定する段階から、コンサルティングとして開発に参加し、ボード、CPU、FPGAといったハードウェアの選定、ならびにOSやドライバの提供を含めた形でシステムとして提供することで、カスタマのアプリ開発へのリソース集中を支援するとしている。

  • エンベデッドビジョンのコンセプト
  • エンベデッドビジョンのコンセプト
  • エンベデッドビジョンのコンセプト。従来、カメラとPCをつないで、PCで画像処理を行なっていたものを、組み込み用途のプロセッサ上で処理してしまうことで、省スペースや低消費電力、設置の柔軟性などを実現することが可能となる。ただし、そのためには組み込みプロセッサなどについての知識をカスタマそのものが持つ必要があったのがこれまでであり、そのために活用のための障壁となっていた

  • リンクスが掲げるエンベデッドビジョンビジネスの領域
  • リンクスが掲げるエンベデッドビジョンビジネスの領域
  • リンクスが掲げるエンベデッドビジョンビジネスの領域は現在、FPGAが志向しているような、中規模生産の領域。カスタム開発ではペイできないが、既製品の組み合わせでは差別化できない領域ともいえる

ビジネス開始当初は、技術のコンサルティングも含めた受託開発というビジネスモデルを志向するが、そうして自社の技術的能力の向上ならび、各種IPの拡充を図っていくことで、さまざまなニーズに応じることが可能なビルディングブロックを多数用意し、用件に応じて、それを提供していく、というスタイルを模索していくという。

  • リンクスアーツの事業領域イメージ

    リンクスアーツがカスタマの開発初期から関与し、最適なハードウェアおよびソフトウェアを提供することで、カスタマはアプリ開発に注力することができるようになる

  • リンクスアーツの事業領域

    リンクスがFA向けで培ってきた画像処理技術と、ISTEが受託開発で培ってきたシステムボード開発のノウハウが合わさることで、中規模な画像処理領域でのビジネスが可能になる

なお、同社では、「エンベデッドビジョンのリンクスへと事業の方向性を強めていく」としており、広がる画像活用市場に対する最適解の提供を目指していくとしている。

  • エンベデッドビジョンのビジネスに対する流れのイメージ

    エンベデッドビジョンのビジネスに対する流れのイメージ。コンサルを経て、システムを開発。実際に、それでアプリケーションの開発を行なってもらい、量産の段にそれを受注し、さらなる数量の販売を狙う、という流れを見込んでいる