理化学研究所(理研)は4月5日、2018年度~2025年度における、第4期中長期計画の開始にあたって、都内にて記者会見を開催した。

第4期中長期計画は、2015年に理研の松本紘 理事長が発表した「科学力展開プラン」のもと、理研の高い科学力で研究を推進し、世界トップレベルの研究機関として社会に貢献することを目指して立てられたものだ。

科学力展開プランとは、

  • 研究開発成果を最大化する研究運営システムを開拓・モデル化する
  • 至高の科学力で世界に先んじて新たな研究開発成果を創出する
  • イノベーションを生み出す「科学技術ハブ」機能を形成する
  • 国際頭脳循環の一極を担う
  • 世界的研究リーダーを育成する

という5つの柱に沿って、高い倫理観を持って研究活動を推進するもの。これにより理研は、日本の科学力の充実を図り、研究機関や産業界との科学技術ハブ機能の形成を通して、世界最高水準の成果を生み出すことを目指している。

  • 写真左から順に小寺理事(新任)、小谷理事、松本理事長、小安理事、加藤理事(新任)、美濃理事(新任)

    記者会見には、写真左から順に小寺理事(新任)、小谷理事、松本理事長、小安理事、加藤理事(新任)、美濃理事(新任)が参加した

「新幹線方式」からの脱却

会見では、新たに着任した役員の紹介とともに、中長期計画の概要や組織改編についての説明がなされた。計画の中でも印象的なのは、「研究者の雇用形態」についての変革だ。研究者の雇用形態について、現在1割程度の無期雇用の割合を、4割程度にまで引き上げるという方針であるとのことだ。

松本 理事長は、「これまでの有期雇用システムでは、研究者は短期間で人よりも成果を残すことが求められていた。このようないわゆる『新幹線方式』のシステムは、研究費が下がり、ポスドクが増えるなどといった現代においては、合わないものとなった」と語る。

  • 記者会見で中長期計画を説明する松本紘 理事長

    記者会見で中長期計画を説明する松本紘 理事長

加えて、「研究者が成果を残すためには、競争することが重要。しかし、その一方でしっかりと安定した地位につき、地に足をつけて研究に取り組むことも重要となる。若手受難の時代ではあるが、努力をすれば登れるようなシステムをつくることで、適正な競争率を維持していきたい」と同氏。研究費の削減、ポスドク問題などといった、日本が抱える課題の中で、研究者がしっかりとパフォーマンスを発揮できるよう、システムの構築を進めていきたいとした。

主な取り組み

そのほかの中長期計画で発表された主な取り組みは、

  • イノベーションデザイナーによる未来社会のビジョンとそれを実現するためのシナリオの提案
  • 社会課題解決に向けたエンジニアリングネットワーク形成と強化
  • 科学技術ハブおよび産業界との共創によるオープンイノベーションの推進
  • 若手研究人材の育成
  • グローバル化の推進
  • 新たな分野創出に行けた研究や組織・分野横断的取り組みの推進
  • 国家的、社会的要請に応える戦略的研究開発の推進
  • 世界最高水準の研究基盤の開発・整備・共用・利活用の推進

など。

松本 理事長は、「理研は質の高い研究を維持し続けるとともに、社会とのつながりを重視しつつ、理研のすべての業務について最大化を目指す」と所信表明を行った。