岐阜大学は、同大学の研究グループが、c-MYCの代わりにDLX4を用いることで従来よりガン誘発リスクを低減できる、iPS細胞誘導方法の特許を米国で取得したことを発表した。

この方法は、岐阜大学大学院医学系研究科 組織・器官形成分野の手塚建一准教授、京都大学の山中伸弥教授らの多施設共同研究によるもので、2014年、英国オープンアクセス科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

  • c-MYC の代わりに DLX4 を用いる iPS 細胞誘導方法

    c-MYC の代わりに DLX4を用いる iPS 細胞誘導方法(出所:岐阜大プレスリリース)

iPS細胞を作製する際に用いられる4因子(山中因子;OCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYC)のうち、c-MYCにはがん誘発リスクがあることが知られている。

手塚准教授は2008年、山中伸弥教授との共同研究において、歯髄細胞は皮膚繊維芽細胞に比べてiPS細胞誘導効率が高いことを発見し、「効率的な人工多能性幹細胞の樹立方法」として特許を取得した。そして、歯髄細胞からiPS細胞を樹立しやすい原因となる遺伝子を探索してきた。

研究グループはこれらの研究の中で、10代の人から採取した歯髄細胞は、20代以上の人から採取した歯髄細胞よりもiPS細胞を樹立しやすく、また10代の人の歯髄細胞では DLX4遺伝子が顕著に発現していることに着目した。そして、 DLX4がiPS細胞の誘導効率を高めていることを突き止めた。

この成果は2014年、「Scientific Reports」に掲載され、DLX4等を用いたiPS細胞作製方法は国内および国際出願をしていた。このたび同特許が米国で成立し、また、欧州でも近く特許が成立する見込みだという。

今後、手塚准教授は、DLX4を含む遺伝子ベクターセットを製造販売する協力企業を募り、国内外の研究機関や医療施設に提供する考えだという。同教授は、3月22日にパシフィコ横浜で開催される、第17回再生医療学会総会のテクノオークションにおいて、「捨てられる歯からiPS 細胞 -安全な再生医療を世界に届けるた めに-」と題した同特許に関する発表を行う。