そんな訳でメインテーマはWi-Fi SONベースのMesh Networkであったが、それとは別に新しいWi-Fi Standardもきちんとカバーしている。今年立ち上がるであろうとされているのがIEEE 802.11axであるが(Photo04)、すでに同社のチップセットにはこれに対応したものがあり(Photo05)、2017年9月にHuawaiが搭載機器のアナウンスを行い、2018年2月の平昌五輪ではKorea TelecomがIEEE 802.11axベースのサービスを行うとしている。これらは何れも同社のチップセットを利用しているという話であった。

  • 高効率Wi-Fiなどとも呼ばれるIEEE 802.11ax

    Photo04:高効率Wi-Fiなどとも呼ばれるIEEE 802.11ax。IEEE 802.11acと互換であるが、1024QAMを採用したモードを追加し、さらに混線時のスループットを引き上げるためのさまざまな工夫がこらされたものとなる

  • IPQ8074そのものは2017年2月に発表されている

    Photo05:IPQ8074そのものは2017年2月に発表されているので、やっとこれを搭載した製品やサービスが出始めた、ということか

さらにその先(仕様策定そのものはIEEE 802.11axよりも前)に登場すると思われるのが、IEEE 802.11adである。こちらは60GHz帯を使った規格で、最大6.8Gbpsの帯域を持つとされる。Qualcommはこれを"code-cutter"と位置づけており、さまざまな機器に利用できるとする(Photo06,07)

  • USBの代替だけでなく、ビデオ映像やネットワーク、すべての代替が可能と同社は主張する

    Photo06:USBの代替だけでなく、ビデオ映像やネットワーク、すべての代替が可能と同社は主張する

  • 実際の機器のイメージ

    Photo07:実際の機器のイメージ

実はQualcommの場合、Snapdragon 835世代からIEEE 802.11adをサポートしており、2017年7月には国内でデモも実施している。ただまだ11adのマーケットが立ち上がった、というほどには数量が出ていないのが現状である。これについて氏は「例えばASUSのZenFone 4はすでにad対応だし、NETGEARなどから対応ルータも出ている。またHPやDell、ASUSなどからも11adに対応したノートPCがラインアップされた」とした上で「いつ市場が立ち上がるかははっきりはわからないが、今後どんどん対応製品が増えてゆく」としており、割と楽観的に考えているようであった。

ところでcode-cutterというと筆者的にはこれを思い出すのだが、「Wireless USBも同じ事を言っていましたが、御存知の通り失敗しました。なんで11adだと成功すると思うのでしょう?」と尋ねたところ「まずスピードが違う。あっちは20Mbpsかそこらだったが、こちらはGbpsだ。次に到達距離。こちらは10mくらいまでの距離が利用可能になる。最後がUsage。Wireless USBはあくまでもUSBの代替でしかなかった。11adは例えばVR Headsetにも使えるし、(説明でも述べたように)映像信号の代替も、WirelessのBackhaulの接続にすら利用できる。そうしたことを考えれば、十分code-cutterになれると信じている」という返事であった。

話を戻すと、IEEE 802.11axおよび11adに関しては、すでにこれをサポートしたチップセットを広範に出荷済みというのは同社の強みであり、なので現世代のスマートフォンではこれを有効化していなくても、次世代のスマートフォンで有効化する、といった形で利用できるようになる。アクセスポイントなども出始めており、もう少し価格が下がると自然とトランジションが起きてきそうな勢いである。

実はこれ、一昔前のIntelの手法そのものだったりする。PCIだったりUSBだったりPCI Expressだったり、といった新しい規格を率先して採用し、ニーズを惹起するというやりかただ。恐らくIEEE 802.11ax/adについては、これがうまくいくだろう。

難しい、というか判断しにくいのはWi-Fi SONである。新規の製品に関しては、すでに4割以上がMesh Networkに対応しているとするが、問題は膨大な既存のWi-Fi機器である。これがWi-Fi SONの恩恵を受けることは恐らく難しいだろう。そして、例えばIntelのチップセットに統合されたWi-FiはWi-Fi SONに対応しないと思われるわけで、今後もこれに非対応な新製品が登場することになる。あるいはCypressの組み込み向けなどのWi-Fi関連製品(旧BroadcomのWICED系)ももちろん対応しないので、IoTの組み込みにも適しているといわれても、実際には非対応な製品が今後も一定量、市場投入され続ける事になる。このあたりが独自規格の弊害であって、対応としてはそれこそWi-Fi Allianceを巻き込んでWi-Fi SONを業界標準とすればいいわけであるが、それがいつごろ実現するか次第、という感じがしなくもない。Patel氏の、というかQualcommの思惑通りにWi-Fi Mesh Networkが普及するかどうか、もうしばらく様子を見たほうが良いだろう。