Qualcommは、台湾台北市で開催中のComputex 2016に合わせ記者発表会を開催ウェアラブル向けや無線LANルータ向け、IoT向けといったSoC新製品を発表した。
具体的に発表されたのは以下の5製品
- IoT向け無線LAN内蔵マイクロコントローラー QCA4012
- 無線LANルーター向けデバイス QCA9984/QCA9886
- 無線LANルーター向けSoC IPQ40x9
- ウェアラブル向けSoC Snapdragon Wear 1100
IoTデバイス向けの無線LAN内蔵SoC「QCA4012」
最初に紹介されたのは、IoT向けの無線LANを内蔵するマイクロコントローラー(SoC)であるQCA4012。すでに発表のQCA4010は2.4GHzのみの対応だが、QCA4012では、2.4GHzに加え、5GHzのデュアルバンドをサポートする。
また、暗号化ハードウェアを持ち、上位アプリケーションからの利用が可能なほか、UART、I2C、42本のGPIO(汎用入出力端子)などを持ち、1.5メガバイトのRAMを内蔵するこのQCA4012は、AppleのHomeKit、GoogleのWeave、Qualcomm(AllSeen Alliance)のAllJoynといった各社のIoT向けフレームワークに対応可能だという。
無線LANルーター向けSoC
次に発表されたのは、家庭向け機器の無線LANデバイスだ。消費者向けのハイエンド無線LANルーターに使われるチップは、QualcommとBroadcomの2社が大きなシェアを持つ。毎年、Computexの前後に新しいチップが発表され、その後、ルーター各社の製品が登場する。今回、Qualcommは、ハイエンド向けのQCA9984とメインストリーム向けのQCA9886の2つの無線LANチップに加え、プロセッサを統合したIPQ40x9を追加した。
無線LANルーターは、マイクロコントローラーなどと呼ばれるプロセッサと無線LANチップ、RAM、ROMなどが主要な部品。無線LANの機能は、チップの性能がほとんどそのまま現れる。
もちろん、ソフトウェアなどもあるため、メーカーによる差があるのだが、ハードウェアには大きな差がなく、中には、半導体メーカーの提供するリファレンス設計そのままというところもある。その中でQualcommは、プロセッサと無線LANチップを統合したIPQ40x9を追加した。
コストを考えるとSoCのほうが有利だが、メーカー側にはサポートや検証を考えるとこれまで作ってきたソフトウェアを使い続けたいという理由がある。このためにQualcommが用意したのがWi-Fi SONだ。
SONとはSelf Organized Networkの略でこれまでは携帯電話の基地局用技術として使われていた概念だ。簡単にいうと、基地局の設定や基地局群の構成などをソフトウェアを使い自動で設定するというもの。
Wi-Fi SONは、アクセスポイントとスマートフォンなどの間で情報交換することで混雑したバンドから別のバンドに移行するといった動作を可能にするものだ。何か規格があるわけではないから、Qualcommのこの技術を採用したクライアントでないと対応が不可能だが、同社はスマートフォン用のSoCとしてSnapdragonシリーズが大きなシェアを持つ。そのため対応は容易である。
やり方としてはかつてマイクロソフトがWindowsにIEを付けて普及させたのと似たようなやり方だ。
無線LANチップのQCA9984/QCA9886は、MIMOを複数のクライアントに分割して同時に通信するMU-MIMO(Multi User-MIMO)に対応する。5GHz帯の無線部を2つ持つ「Tri-Radio」技術を採用する。
Snapdragon Wearシリーズ第2弾が登場
最後に発表されたのはSnapdragon Wearシリーズ第2弾となるSanpdragon Wear 1100だ。Snapdragon Wearシリーズは、ウェアラブルデバイスむけのLTEモデム内蔵のSoCだ。
すでに2016年2月に上位デバイスとなる2100が発表されている。今回発表された1100は、Cortex-A7のシングルコアで、LinuxやRTOSなどを実行することを想定しており、Android Wearのような高性能ウェアラブルオペレーティングシステムは、2100のほうが向いているとする。
なお、2100は、CPUコアは同じCortex-A7だが、クワッドコア(4コア)になっている。また、搭載されているLTEモデムも2100がカテゴリ4なのに対して、1100はカテゴリ1のLTEモデムとなっている。