ルネサス エレクトロニクスの代表取締役社長兼CEOを務める呉文精氏。同氏が、2016年6月に同社のCEOの座に就いて、およそ1年半を経たが、この間、特に2017年はIntersil(2018年1月よりルネサス エレクトロニクス・アメリカに社名変更)の買収や、株式の公募・売出(PO)、「One Global Renesas」の実現に向けた組織再編など、次の成長に向けたさまざまな手を打った年となった。そんな同氏に、2017年の振り返り、そして2018年の抱負について語ってもらった。

組織再編で、グローバルで勝てる組織に

主だったルネサスの2017年の出来事を以下に記す。

  • 1月:CES 2017にて自動運転車のデモを実施
  • 2月:Intersilの買収を完了
  • 4月:東京にて「Renesas DevCon Japan 2017」を開催
  • 6月:POを実施
  • 7月:大規模な組織再編を実施(3事業本部体制へ改編)
  • 9月:日産「リーフ」の自動駐車機能への製品採用を公表
  • 10月:トヨタ/デンソーが開発中の自動運転車への製品採用を公表
  • 11月:フォーミュラEチームのマヒンドラと技術提携
  • 12月:「GRデザインコンテスト 2017」のグランドフィナーレを実施
ルネサス エレクトロニクスの代表取締役社長兼CEOを務める呉文精氏

ルネサス エレクトロニクスの代表取締役社長兼CEOを務める呉文精氏

もっとも大きなポイントは、7月(一部はそれ以前より実施)の組織改編だろう。呉氏曰く、「収益責任を持つ事業本部を作った」とのことで、3つのグローバルな事業本部(「インダストリアルソリューション事業本部」、「ブロードベースドソリューション事業本部」、「オートモーティブソリューション事業本部」)を設立し、それぞれの事業部がグローバルで収益に責任を持つ体制へと変更された。この意図について同氏は、「アジリティ(機動性)を重視した体制」と評する。これまでのルネサスは、営業は営業、開発は開発といったそれぞれの立場を打ち出した機能別かつ地域の独自性が強い組織体制であった。これを、収益の責任者が機動性を持って、意思決定できる組織へと変貌させることが今回の再編の狙いだという。

「統合前から(旧ルネサス テクノロジならびにそれ以前の日立、三菱、NEC時代)、ルネサスは大鑑巨砲主義と言える体制が続いてきた。今回の再編は、組織のレイヤを少なくすることで、機敏に意思決定を実現できるようにしたもの。そうした点はIntersilの方が上手くできていた。だから、ルネサスはIntersilを切り刻んで飲み込むのではなく、彼らの良いところを触媒にして、よりグローバルかつアジャイルな、収益体質の企業へと変革させていくことが今回の意図するところ」(同)であり、元々、品質や大口顧客とのリレーションシップ、生産技術などは金メダル級であった同社に、機動性とグローバル感覚を付与することで、勝てる組織にしたいという同氏。「いろいろあるが、順調に滑り出している」という発言もあり、改革が実際に上手くいっていることを如実に物語っていることを裏付けるものとなっている。

年率20%超の成長達成見通しの2017年

事実、同社の2017年の決算概要は、1-12月期通期(2016年の途中より決算月を変更)で売上高は前年比20.9%増の7722億円の見通し。熊本地震の影響からの回復や、Intersilの買収による押し上げなどもあるが、グローバルの半導体市場の成長率が20.6%(WSTS秋季予測)であり、それよりも高いこととなる。しかも、2017年の半導体市場を牽引したのはメモリで、ロジックやマイコンなどは良くて10%程度の成長率であることを考えると、同社の伸びは好調、という表現がぴったりと当てはまる勢いである。

「(同社が2016年に掲げた)中期経営計画では、半導体売り上げを注力分野で2倍にする、と言っているが、そのベースとなるイメージは年率10%弱程度の成長率。2017年は同20%超であり、かつ売上高総利益率(Non-GAAPベース)も目標50%に対して、46.3%の見通しで、前年比で2.7ポイント改善と、順調に改善が進んでいる」とするほか、「作っているもののほとんどの需要が伸びており、顧客からのニーズに応えるのに苦労するほど」と、半導体市場の好景気が、同社の躍進を後押ししていることを強調する。