――特にプリズムキングカップでは、作画で実現可能そうな部分でもCGで作られている場面がありました。何が判断基準だったのでしょうか?

乙部氏:
基準というよりも、菱田監督は、僕が「ここはCGではできません」と言っても食い下がってくることが多いので、今回は最初からあきらめてCGで作りきったというところです(笑)作画とCGの混在は集中力をそぐことにもなりかねないので、プリズムキングカップはなるべくCGで作りたいという狙いもあったようです。

――ヒロがコウジからマントをかけられる部分などは作画でしたね。

乙部氏:
あそこも当初CGを希望されていたんですが、さすがに勘弁してください、と言いました(笑) まず、マント(のCGモデルが)できていなかったですし。

――キンプリ公開前にVRコンテンツが展開されていましたが、作中のキャラクターの3Dモデルなどアセットは提供しているのでしょうか?

乙部氏:
はい、提供しています。ただ、向こうはリアルタイム用なので、一度作り直してもらってはいますが、モデル自体は流用しているみたいです。

――なるほど、動きですとかプログラムはまったく違うけれどもアセットは一部活用という。

乙部氏:
そうですね。

――アプリゲーム(KING OF PRISM プリズムラッシュ!LIVE)がローンチ予定で、キンプリではタイガのCGモデルが登場しました。今後、どこかでこの資産を生かしたり、他のエーデルローズ生のCGモデルを作られたりする可能性はあるのか、展望について教えてください。

乙部氏:
もちろん、まだCGモデルを作れていないエーデルローズ生を作りたいという思いはあります。タイガ、アレクに関してはまだVRで展開していないので、まずはそこからですね。その反響がよければ、追加キャラを設ける方向に進められればいいなと思っています。

また、個人的にカケルの「Groovin' Chara-Emo Night」が好きで、彼のプリズムショーのCGは作ってみたいですね。札束を舞わせたいです(笑) 今回、彼の働きが無ければ、ヒロは王になれなかったかもしれなかったですし。

――CGは素材を他のシーンや別のコンテンツに展開していけるのが強みですね。今作では、ルヰのプリズムジャンプをはじめ、RLやそれ以前のプリティーリズムシリーズなどからの引用が多くありました。アセットは流用されていますか?

乙部氏:
はい、そうです。キャラだけを変えて使っています。

――今回含めシリーズ通して虎の登場が多いですが、元々はわかなやせれなのショーに登場した虎なのでしょうか?

乙部氏:
今回アレクVSタイガで出した虎も、わかなやせれなの時に使った虎と顔は同じです。炎のエフェクトに上から虎の顔をぼかして乗せると、炎が虎の形になったように見えるんです。実は龍は虎を改造して作っています。

――アレクが画面を蹴って壊すところは、シオンのキックが元になっていますか?

乙部氏:
あれはアレクVSカヅキのカメラワークの修正ですね。4月くらいまでは(画面に)何も入っていなかったんですが、せっかくキックしているのでもっと派手に破壊しようと。

シオンも蹴っていましたけれど、直接それが元ネタというよりは、プリパラでそらみスマイルがノンシュガーと戦った時に画面がパンと割れている、そちらの流用なんです。すぐに監督に見せたら、もう作ったのかと驚かれましたが、それはやはり前の資産を使っているからできることですね。

アレクが画面を蹴って割るシーン

――流用にあたってどの程度調整は必要なものですか?

乙部氏:
やはり頭身が違うので、カメラへの収まり方などが多少変わってきますから、ちょっと引きのアングルにしたりはしています。CGキャラクターの世代としてはルヰが一番新しいです。

また、ジュネやあいらの過去の資産を使っていますが、シリーズを重ねるごとにボーンの構造が変わってきているので、そのための修正はしました。簡単に言えば、手を組んだ場合に指が干渉してしまうとか、男性の体格バランスになっているので反映する過去データとの差があったり、振りの内股をやめたりとかでしょうか。とはいえ、そんなに大変な修正ではないですけど。

――過去のシリーズからのCGの再利用で、最古の流用は何でしょうか?

乙部氏:
おそらく、プリズムの女神(そなた)じゃないですかね。あれはプリティーリズムシリーズの一番初めにやったものなのでデータが古くて、今の作業環境でいじろうとするとエラーが出てしまい、古いソフトを噛ませる必要がありました。ただ、元データを無理矢理開くための時間がなかったので、りずむを使って顔だけそなたに変えるみたいな小細工をしていました。そうしたら、SNSとかで、あれはりずむだって言っている人がいて。親子なので似てはいますが、体の印象がそう見せるのかもしれないですね。

エフェクトで言えば、オーロラライジングが一番古いですね。あれは本当に第1話で作ったものなので。今回はルヰがやっていますが、今でも問題なく見られますね。当時は伝説の技でけっこう派手というかそれなりに説得力のあるものでした。

――プリティーリズム・オーロラドリームから脈々と受け継がれているのですね。

乙部氏:
キンプリはレインボーライブのスピンオフですが、それだけ見ていればキンプリを丸ごと楽しめるかというと、そうでないですね。

また、プリズムキングカップのショーの流れは、プリティーリズム・ディアマイフューチャーなんですね。グレイトフルシンフォニアを踏襲したような。「LOVE♥MIX」から始まり、破壊と再生、樹が生まれて、戴冠なので、基本的な流れは踏襲しています。ただ、これも僕は言われてから気がついたんですけどね(笑)

ただ、あえてなぞったというより、気がついたらそうなったとも受け取れるようになっていたように感じました。神話的なモチーフが重なったようにも思えますし、ただ、明確な演出意図を聞いて作ったわけではないので、菱田さんがどう考えているかはちょっとわからないですが。

――今回制作されたシーンの中で、乙部さんが個人的に気に入っているところはどこですか?

乙部氏:
女神像というか、RLの7人がヒロの最後のライブの最中に出てきますよね。実は、直接菱田監督には言っていないんですけど、僕自身、ショーをするヒロの周りに彼女たちが寄り添ってくれたらと思っていたんです。あんなにデカいものになるとは思っていませんでしたが(笑)。そうしたら監督があんなコンテを描いてきたので、僕も「やります」と。

――最後に、これから今作を見る方、またもう見た人に一言お願いします。

乙部氏:
これからキンプリをご覧になる方には、そうですね。「これを見ないで死ぬんですか?」と言いたいです。多分、見ていただけたら、エンタメの形が変わると思います。

もう見てくださっている方々には、どんどん考察をしていっていただいて、監督も言っていたことですがいつか答え合わせをしてもらえるようなことになれば、と願っています。そんな場が持てることになれば、そのタイミングで何か発表できたら嬉しいので、どんどん劇場に通ってください(笑)

――ありがとうございました。