「お金にならない」ことを実現するためのアプローチ

――小林さんがおっしゃったような面で、Webアクセシビリティ対応は利益として数値が出やすいものとは言えないかと思いますが、推進するためどのようにアプローチをかけていかれたのでしょうか?

ヤフー 中野氏: Webアクセシビリティには直接的な費用対効果が見えない、あるいは出しづらい側面があるので、いわゆる「数字の話」になると必要性に疑問を持たれてしまうことはあります。

そこで、弊社でのWebアクセシビリティ対応はサービスの品質の一要素として考えています。デザイン原則を社内で作っていまして、シンプル、などキーワードがいくつかある中に、ユニバーサルというワードがあります。

アクセシビリティ単体で数字に直結させようとすると話が難しくなるので、品質の担保のバックボーンとして訴えていくのがよいのかなと思っています。

サイボウズ 小林氏: なるほど。僕の経験から言えば、会社の方針とアクセシビリティが合致しているところに共感してもらって進めていく、というのがひとつのやり方だと考えています。

サイボウズの広報活動はチームワークの価値を高め、働きやすさを担保する方向で進められているので、誰にでも使いやすいものを目指すWebアクセシビリティへの対応は、相性がとてもよいと言えるかと思います。

また、実際の対応面で言えば、Webアクセシビリティ対応という名目で工数を取るのは難しい側面があります。ただ、それは対応できないということではなくて、kintoneでキーボード対応や、コントラスト比の調整を行っています。ですが、それはアクセシビリティ対応としてやったわけではないんです。入力の速度向上や見やすさの改善のために取った工数の中で対応していきました。これは、中野さんがおっしゃった「品質の担保のバックボーン」といえるかと思います。

グリー 嘉久氏: 弊社の場合、サイトの仕様決定から僕たちアクセシビリティ対応するメンバーが入っているので、あらかじめ対応することが仕様で定められているような状態なので、工数の問題はないですね。

収益以外の面でなぜ対応するのか、ということですと、2点あります。 1点目は、先にお話したコーポレートションミッション「インターネットを通じて、世界をより良くする。」に準じて、コーポレートサイトの情報を広く伝えたいというものです。コーポレートサイトに載っている事業内容などに加え、CSRの一環で行っているインターネットの啓発授業、千葉大学との共同授業活動などをさまざまな人に知っていただきたいという狙いがあります。そうした中で、閲覧性などで情報の周知を阻害したくないという側面もありました。 2点目はメンバーのモチベーション。せっかくWebアクセシビリティを意識してサイトを作っているのに、対外的に知らしめないのはもったいないですし、実働メンバーのやる気に繋がります。