さて、Intel側のプレゼンテーションはこの程度で、ここからRon Moore氏によるARM側の発表になるのだが、実はセッションの前日にMoore氏とミーティングの機会を得ており、少し突っ込んだ内容をお聞きすることが出来た。そこでここからはミーティングの内容とセッションの内容を混ぜて御紹介したい。

そもそもIntelがARMのプロセッサコアを利用してのファウンドリサービスを行う契約がいつスタートしたかであるが、14nmに関して言えば「2011年か2012年か、そのあたりのタイムフレームだったと思う」(Moore氏)。当然ながらこのあたりがちゃんとしていなければ、そもそもStrarix 10の製造受託を受けるといった事を発表できる訳も無い。当時のCEOはまだPaul Otellini(Brian KrzanichがCEOになったのは2013年5月)で、よくこの決断を出来たなとは思うのだが、そんな訳でOtellini時代からファウンドリビジネスでARMコアを使うというのは規定路線になっていた訳だ。

ただこの時なぜアナウンスを行わなかったかと言うと、AlteraはStrarixの実装にあたり、自身(とIntel)のフィジカルIPを使う事にしたからで、実はこの場合はファウンドリライセンスは本来必要無いのだという。なぜファウンドリライセンスが必要かといえば、ARMの提供するArtisanなどのフィジカルIPを保護するためで、顧客がRTLだけをARMから取得して、あとの実装を自分でやる分にはどのファウンダリのどのプロセスを使うかも自由なのだという。そしてこの時期、Intelは自身でもAtomベースのモバイルプロセッサを製造しており、このためにIntel独自のフィジカルIPなどを用意していた。このケースではファウンドリサービスでARMプロセッサを利用できることを声高に主張しても、実際にそこでARMベースのSoCを製造するのにはものすごく高いハードルが聳え立っている訳で、「そんなもの使えるか」と一蹴されて終わりだったからだと思われる。

それではSpreadtrumは? という疑問はあるのだが、思うにStrarix 10の実装を通してCortex-Aプロセッサ(恐らくはCortex-A53のみだろう)の実装の方法論や、必要となるフィジカルIPの準備が整ったので、これを利用してAlteraの時よりはずっと簡単にSoCの実装が可能になるめどが立ったのだと思われる。以前であればこれらのフィジカルIPはAlteraに権利があるはずだが、同社がIntelの傘下に入ったことでこれを再利用できるめどが立った、というあたりだろうか? 実際Moore氏はSpreadtrumの製品に関して「Artisanの提供は行っていない」と断言した。

では今後は? というと「まだ決まっていない。我々にとって、Intelの10HPM向けのフィジカルIPとPOP IPの提供は最初のトライアルだ。この結果如何では今後の展開には色々な可能性があるだろう。このあたりはエコシステムをどれだけ構築できるかだが、個人的にはIntelはほかのファウンドリと同等のエコシステムを構築できると思う。ただ基本的にPOP IPはそれぞれのファウンドリの最新(Cutting Edge)プロセスに対して提供するので、Intelの場合は10nmとか将来は7nmがこれに該当する」という返事であった。