産業用制御システムにおいて、4-20mAカレントループ・トランスミッタ製品は、使用、設置および保守が容易なことからコントロールセンターとフィールドに設置されたセンサ/アクチュエータ間のデータ伝送の最も一般的な通信方式の1つとして、今でも使用されています。

4-20mAカレントループ・トランスミッタ製品の歴史は、初期の産業用オートメーション・サイトでアクチュエータの制御のために圧搾空気信号を使い、比例制御を行ったことから始まりました[1]。代表的な圧力レベルは3PSI~15PSIであり、3PSIはゼロスケールを、15PSIはフルスケールの入出力を表しました。圧搾空気のラインが故障した場合、圧力は0PSIまで低下し、対応が必要なフォールト(故障)状態であることを表しました。電子技術が主流になると、圧搾空気ラインは、アンプ、トランジスタ、およびその他のディスクリート電子部品で構成された4-20mAカレントループに置き換えられました。

「なぜカレントループを使うのか」と疑問に思われるかもしれません。キルヒホッフの法則から、閉ループの電流は一定です。このため、4-20mAカレントループでは、非常に長い距離にわたるループ上の任意の点で、配線抵抗に関係なく、一定の電流を実現できます。もちろん、そのためにはオームの法則に従って、十分なループ電圧が必要です。圧搾空気システムと同様に、配線の破損や断線によってループが途切れた場合にはループ電流が0mAとなり、対応が必要なフォールト状態であることがわかります。さらに、カレントループは電気的に大きな過渡波形によるダメージに対する保護が比較的容易であることや、本来、RFI(無線周波妨害)やEMI(電磁妨害)に強いという特長も備えています[2]

4-20mAトランスミッタで最もよく使われるのは、図1の2線式トポロジです。これを2線式センサ・トランスミッタと呼びます。

図1:2線式の4-20mAセンサ・トランスミッタと、2線式 アナログ入力モジュールのブロック図

2線式センサ・トランスミッタは、圧力、位置、温度、レベル、張力、荷重、流量、水や大気などの組成/汚染をはじめとした、フィールドで計測した物理的な数値をアナログ入力モジュールに伝送するために使用されます。名前からも分かるように、この型式のトランスミッタは2本の配線のみで動作します。4-20mAカレントループの通信に使う 2本の配線を電源として使い、フィールドのセンサを動作させることが、この手法の主要な設計要件の1つです。センサ、センサのコンディショニング回路、4-20mAトランスミッタ回路の動作時の消費電流は、合計で4mA未満であることが必要です。さもないと、トランスミッタは4mAの0スケール・レベルを送信できないことになります[3]

VLOOPのGNDは、この2線式センサ・トランスミッタに与えられた2つの接続点のどれでもありません。このため、このトランスミッタ回路はローカル・グラウンド(GND)(またの名を2-Wire GND)を使わなければなりません。トランスミッタの出力電流が変化すると、レシーバ・リターン(RTN)端子の電圧が変化することから[3]、2-Wire GNDの電位はVLOOP GNDの電位に対してフローティングさせておくことが必要です。もしセンサがVLOOP GNDに対して異なる電位に接続される可能性がある場合、絶縁が必要になります。例えば熱電対は、温度を計測しようとする物体と、熱的および電気的に短絡していることが多いため、この状態は熱電対用のセンサ・トランスミッタ製品では一般的です。