Procreate

最後は、オーストラリアの企業Savage Interactiveがリリースしている描画アプリ「Procreate」。寺田克也さんもiPhone上での描画に利用していたことのある同アプリは、iPad Proの発売に際していち早く同機種への対応アップデートを実施。アプリ名が「Pro」から始まっている通り「プロ向け」をうたい、処理速度や高機能さをウリとしている。

Procreate

――「Procreate」、使用感はいかがでしたか?

レイヤー機能があり、しかもレイヤー構造を保持したPSDファイルへの書き出しができ、とても便利だと思いました。Dropboxとも連携可能で、運用に柔軟性があるのも嬉しかったです。

――描きごこちという面ではいかがでしょうか?

他のアプリでは、ペンツールの筆圧が太さと濃さどちらかにしか反応しないケースもあったのですが、このアプリのペンツールは太さ・濃さの両方が筆圧に対応し、その強さに応じて強弱が付くのがよかったです。

ただ、ブラシの筆触が少しイメージと違いました。鉛筆は描線が先の丸まったような感触なのと、水彩の描き始めに必ず同じ形が出て、スタンプのようになってしまうのが気になりました。

デフォルトでは線の強弱がかなり強めに出て、普段通りの筆圧で使うと薄く、力を少しこめると途端に濃く太くなってしまったので、もう少し繊細な動きをしてくれるといいですね。このアプリのペンツールはかなり細かく調整できるように設定画面が工夫されていたので、自分にあった設定が見つかれば改善されるかもしれません。

各アプリのファーストタッチを終えて

――今回使ったアプリの中では、どれが最も好感触でしたか?

「Procreate」ですね。

ですが、いずれのアプリでもパームリジェクション機能(注:イラスト描画中に画面と接する手のひらの部分を認識しないようにする機能)が不十分なのか、何度か不要な点が画面に現れてしまっていました。

今「VAIO Z Canvas」を所有しているのですが、ハードウェアに専用のボタンがあり、それを押すとペンのみ感知するモードになって指でのタッチをすべてキャンセルしてくれるので、こうした誤検知は起こりません。iPad Proでも、ソフトウェア側に同等の機能を実装してくれるアプリがあらわれたら嬉しいです。

また、難しいかもしれませんが、CLIP STUDIOがiOSアプリになってくれたらと思うところもあります。

――今回の取材には間に合いませんでしたが、セルシスのiOSアプリ「kakooyo!」が、近日iPad Pro対応になるようです。

それ自体は嬉しいニュースですし、アップデート後に使ってみないと何とも言えませんが、「kakooyo!」はクリスタとはかなり性格の異なるアプリで、人とイラストを共有して楽しむことに重きをおいているので、仕事で使うのは憚られるのが正直なところです。

例えば一人で描くモードでラフを切ってクリスタ(CLIP STUDIO)に持っていく…という手はあるかもしれませんが、ちょっとした操作ミスで人目にさらしてしまう可能性のあるツールで、仕事の絵を描くのは厳しいですね。とはいえ、普段メインで使っているセルシスのツールのひとつであることには変わりないので、「kakooyo!」のアップデート自体は楽しみです。

また、iPad Proのマシンスペックがあればクリスタ自体を動作させるのも可能ですが、その他のiOSデバイスでは動かせないものになってしまうので、クリスタのiOS版を作るのは厳しいのだろうなあ…と推測しています。

――もしもiPad Proで使えるクリスタがあれば鬼に金棒、という感じでしょうか?

というか、iPad ProをiOS端末としてでなく、「VAIO Z Canvas」や「Surface Pro 4」といった"絵の描けるモバイルデバイス"として並列に比較・評価した場合、僕にとっては「クリスタが使えない」というのがマイナス点になる、といったところです。