――「クリスタ」で良くなった面をこれだけ丁寧に解説いただいた後に恐縮なのですが、逆に「クリスタではやりづらい」と思った部分はありますか?

「クリスタ」ではツール置き場が種別交えて統合できず、分散する状態になっている

そうですね、「コミスタ」で快適に使っていた「カスタムツールパレット」が無くなってしまったことは一番残念な部分です。今までは「ブラシ」や「選択ツール」などと一緒に、よく使う「左右反転表示」や「色相・彩度・明度」の機能も同じ位置に集めることができたのですが、後者は「コマンドバー」として、画面の上部に固定になってしまいました。よく使うツールが分散されてしまったので、これは個人的に困る部分の筆頭です。(いつか復活してほしい…)

それ以外でも、「結果的に同じことはできるんだけど、そこに至るまでの手間が増えたり、処理が重くなってしまった」というものはちょこちょことあります。「枠線レイヤー(コマ枠フォルダー)」、「集中線ツール」、「流線ツール」などがそうでしょうか。コミスタでとても活躍したツールなので、いつか同等か、それ以上の使い勝手に進化して欲しい部分です。期待しています。

――「コミスタで出来たのにクリスタでは出来ない」機能についてSNS中心で活発に議論されていますが、今現在使っている平尾さんから見て、そういった「引き継ぎ」出来ない部分はどこかありますか?

「コミスタ」や「イラスタ」からのツール環境の移行手順(ComicStudio4.0からの移行の場合)

僕が移行した2012年末頃は「特殊定規」の機能が入っていなくて、しばらくはコミスタと行ったり来たりしていましたが、今では特にできない機能はない…かな?と思います。今はコミスタ形式のファイル(.cst/.cpg)も問題なく読み込んで変換できますし、コミスタで使っていた素材もそのままクリスタに登録できます。引き継ぎのハードルはかなり低くなっていると思います。

――クリスタの動作の軽快さに不安がある、というコメントも散見されますが、クリスタの動作が「重い」と感じたことは?また、対策はありますか?

僕自身は「重い」と感じることはあまりないです。作業マシンとしては、家用にCPU:Core i7 3770/3.4GHz メモリ:32GB の自作PC(windows8.1)、外での作業用に CPU:Core i5 4200U/1.6GHz メモリ:4GB の「Surface Pro 2」(windows8.1)、を使っていますが、どちらを使っていても基本的な作業ではあまり差を感じません。むしろ「コミスタ」や「イラスタ」に比べると「軽いなー」と感じる事のほうが多い印象です。

ただ、「重い」といえば、ファイルサイズですね…。これは動作の快適さとトレードオフになっている部分だと思うのですが、レイヤーを作ったり、消したり、作ったり、消したりを繰り返していると、表示のためのキャッシュデータが増え続けて、無制限にファイルサイズが大きくなってしまう、というクリスタ特有の仕様があります。以前カラーページを作ってるときに、1ファイルで1GBを超えた事があって慌てました。

そうなると最初の読み込みに時間がかかってしまうので、「あ、これ重いな!」と感じたら、『ファイル>指定の形式で保存>.lip(最適化)』で、最適化されたファイルを新しく作れますので、いざというときは試して、ファイルを入れ替えてみてください。僕の件のファイルは一気に1GB→100MBまで減りました。

指定形式の保存>.lip(最適化)でファイル重量を削減。「いざというときに助かります! 」と平尾氏

――最後に、これから「コミスタからクリスタ」へ移ろうとしている方へのメッセージをお願いします。

使い慣れたソフトから新しいソフトに移るのは、とても躊躇してしまうことです(僕がそうでした…)。でも、僕が移行した2年前ならいざしらず、あれから着実なバージョンアップを重ねてくれていますので、トータルで見れば今や機能面でも「コミスタ」と同等か、使い方によってはそれ以上のことが出来るようになっています。

プラス・マイナスでリストを出せば、プラスの項目の方が圧倒的に多くなっています。今なら胸を張って「クリスタにいらっしゃーい!」と言えるようになっていますので、移行に迷ってる方、以前試してやめちゃった方は、ぜひもう一度試してみてくださいね!なあに、一度実戦に使えば、イヤでも慣れますよ!僕がそうでした!!ぜひー!

滅亡系ドタバタコメディ『放課後カタストロフィ』第1巻発売!


5/2発売の『放課後カタストロフィ』1巻では、設定作りからネーム、完成まで、0から100まで全て「CLIP STUDIO EX」で制作しています。もし興味がありましたら「これくらいの漫画は出来るんだ」と、仕上がりの参考にしてやっていただけると嬉しいです。月刊 ヒーローズHEROS「放課後カタストロフィ」の作品ページでは、第1話と最新話を読むことができますので、よろしければぜひ!