Windows 8が2012年10月26日に発売されてから、約半年が経過した。この間の取り組みについて日本マイクロソフトの樋口泰行社長は、「タッチパネルの供給が遅れたことや、マーケティング施策の一部に反省材料はある」とし、自らに65点という厳しい自己採点を下す。

しかし、その一方で、「インテルの新たなCPUの登場や、国内PCメーカーを中心としたユニークな新製品群の投入によって、今後の盛り上がりには手応えを感じている。企業におけるWindows 8に対する関心の高さにも期待している」と語る。そして、自社ブランドのタブレットPC「Surface」についても、「予想以上の出足をみせた」と語る。

日本マイクロソフトの樋口泰行社長に、Windows 8やSurfaceをはじめとする同社の事業戦略について聞いた。

日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏

-- Windows 8の発売から約半年が経過しました。これまでの成果を自己採点するとどうなりますか?

樋口 発売前から発売日、そして現在までの国内市場における取り組みに関しては、現場のチームは大変がんばってくれています。その意味では、90点、95点という点数を与えることができます。しかし、反省点がないわけではありません。「Windows 8=タッチ」という訴求をしてきたものの、タッチパネルそのものの供給が遅れ、タッチ機能を搭載したPCが量販店店頭に並んでいないという事態が起こりました。正直なところ、その点ではもどかしさというものがありました。量販店の方々からも、「モノがあれば売れるのに」といわれましたが、結局、年末商戦でタッチパネル搭載PCの販売比率は、10%を切る状況に留まってしまいました。こうしたチグハグ感は、大きな反省材料です。

また、本社におけるマーケティング施策を、日本においてうまく展開することができなかったという点でも反省すべきところがあります。この部分を自己採点すると、60~65点といったところでしょうか。

-- Windows 8では、10月26日の発売日までに発信する情報を極力制限し、発売日当日にサプライズ感を高め、そこから一気に展開するというマーケティング手法をとりましたが・・・

樋口 もともとマイクロソフトは、OEMパートナーや周辺機器パートナー、アプリケーションベンダーやリセールパートナーなどとのエコシステムによって、一緒になって市場を盛り上げてきた企業です。それにも関わらず、Windows 8では、自己完結型の情報提供手法を取り入れました。戦略面、連携面の一部において、反省すべきことが発生していたのは事実です。これは米国本社側も反省材料のひとつだと捉えています。Windows 8はどこが進化しているのか、製品の機能的特徴はどこにあるのか、そして、パートナーやユーザーに対して、どんな情報提供をしていくべきなのかといったことを、パートナーの声を取り入れてやっていきたいと思います。また、日本マイクロソフトには、これまで培ってきたエコシステムとしての底力、製品としての底力がありますから、これを生かしながらやっていきます。

タブレット端末市場は、アップルが先行したわけですが、このように新たな市場を創造するといった場合には、ひとつの企業による自己完結型のマーケティング施策の方が機能しやすいのは事実です。しかし、新たな製品が市民権を得て、普及期に入ると、ひとつの企業が独占的なシェアを獲得することはできなくなります。それは、ユーザーの要求が多岐に渡り、様々な選択肢が出てくるからです。日本マイクロソフトが提唱しているのは、PCの資産を生かしながら、タブレットユースでも使えるという点です。その提案に対しても、ユーザーの受け方は様々でしょう。タブレット用途の重みづけが大きいというユーザーもいますし、そうではなく、PC用途を主軸に考えるユーザーもいます。この範囲は、個人ごとのライフスタイル、企業ごとのワークスタイルによっても様々でしょう。そうなると、バリエーションが求められ、選択肢も求められます。普及期においては、広がりが大切になってくるわけです。マイクロソフトは、普及期に入るタブレット市場において、その強みを生かした施策を今後展開していくことになります。

既存のタブレット端末の購入者の約半分からは、「こんなことしかできなかったのか」という不満の声があがっていると聞きますし、これまでタブレットに加えて、PCとしての利用もできるというメリットは、多くのユーザーに必ず理解していただけるものと考えています。将来的には、こうしたWindowsのフットプリントの上に、Windows Phone 8のような製品群も連携させていきたいと考えています。

これまではタッチパネルの供給の問題もありましたし、Windows 8ならではのハイブリッド型製品のメッセージを重視した結果、ピュアタブレット製品に対する訴求が弱かった部分があるかもしれません。広がりを提案するなかで、ピュアタブレットに関しても力を注いでいくことになります。

タブレット競争のフェーズ1には、マイクロソフトは参加できませんでしたが、フェーズ2、フェーズ3という、これからの取り組みのなかでは、Windowsが必ず存在感を発揮していくことになります。フェーズ2は、フェーズ1とはゲーム環境がまったく違うと考えています。まさにこれからが本番です。