米Freescale Semiconductorの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンが9月10日に開催した同社のプライベートショー「Freescale Technology Forum Japan 2008(FTF Japan 2008)」では、プレス向けセッションとして、FTF 2008 America初日に発表した「QorIQ」に関する説明と、当日新たに発表された「PowerQUICC III」の新製品「MPC8536E」の説明が行われた。

QorIQに関しては、大原氏のFTF 2008 Americaのレポートにて詳細が述べられているので、ここでは簡単におさらい程度に触れ、合わせてMPC8536Eの機能についてレポートすることとする。

マルチコア化は組込プロセッサに対する市場からの要求

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン プロダクト・マーケティング本部 ジェネラルマネージャー 伊南恒志氏

QorIQはマルチコアプロセッサだが、「市場の流れとしてNGNへの対応が進められており、これによりサービスメニューの多様化が始まりつつある。具体的にはファイアウォールなどのほか、コンテンツの中身を読みに行く必要性が通信機器より始まっている」(フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン プロダクト・マーケティング本部 ジェネラルマネージャー 伊南恒志氏)という。これが今後、ブロードバンドネットワークにつながる組込機器にも波及していくだろうと予測される。

そのほか、有線、無線ともにブロードバンド化が進んでいること、ならびに放送と通信の融合が進んでいることなどにより、動画系のトラフィック量の肥大化が進むほか、新しいネットワークアプリケーションの登場によるセキュリティやQoS、トラフィック制御が求められるようになり、従来のレイヤ3以下の処理からレイヤ4以上の処理が求められるようになる。そこにつながる組込機器についても、より高い性能が求められるようになる。

組み込みプロセッサに対する市場の要求

「今まではWebブラウジングだけだったのが、今後は動画に対して何かしらの処理をさせるとか、コンテンツを読みにいくといった処理になると、桁が違う処理能力が必要となる」(同)わけであり、今まで数百MHz程度の動作周波数で対応できていた組込機器もGHzレベルの動作周波数にする必要があるという。

また、低消費電力化も必須でありそういった意味でもマルチコア化は避けて通れない選択肢ということとなる。「組込機器によって違うが1つは30Wが目安。もう1つが10W以下の実現。10W以下になるとファンレス化が可能となる」(同)であり、この消費電力を実現するようにQorIQのポートフォリオは拡充されていくという。

現在のQorIQファミリは5つのラインナップが用意され、いずれも45nm SOI プロセスを採用する。P1/P2/P4ファミリの提供が予定されており、次いでP3/P5が投入される計画は変わらない。搭載可能コア数はダイサイズの問題もあり現状8コアが最大だが、「アーキテクチャ的に最大である32コアまで増やすことが可能であり、32nmプロセスを採用すれば確実に最大コア数を増やすことができる」(同)という。

QorIQの5つのプラットフォームレベル(FTF 2008 Americaで提示されたものと比べると、地域性に合わせてか、微妙に項目が変更/追加されているのが分かる)

QorIQの最大の特徴はP3以上で採用される「CoreNet」。マルチコアでは、内部バスがボトルネックになって性能を引き出せない場合がある。CoreNetの考え方としては、「それぞれのCPUコアがオンチップ上のペリフェラルに対し、同時にスイッチを使用して動作する」(同)というもので、バスを800Gbpsのファブリック化することにより、これを実現するというものである。

QorIQにおけるマルチコア・プラットフォームの概要(中心に見えるのがCoreNet部分)

また、ハードウェア機能としてネットワーク系のアクセラレータを幾つか搭載していることも特徴。例えば、「Pattern Matching」では、ウィルスチェックを行うことができる。「ソフトウェアで行うこともできるが、基本的にウィルスチェックでは、パターンのマッチングを見るので、パラレルのアルゴリズムに向いていない。同アクセラレータは、高速のサーチエンジンで、メモリ領域を割り振ると、その中でのウィルスパターンだけを見に行くというもの」(同)であり、高速に検査することが可能になるとした。